1月11日の日経新聞に「ブルーカラー賃上げ格差」が載っていました。
・・・専門スキルを持つ現業職「ブルーワーカー」で賃上げの勢いに格差が出ている。2024年の所定内給与を20年と比較すると、タクシー運転手は4割増える一方で、板金従事者など減少する職種もあった。海外では能力次第で厚待遇を得られる現業職を見直す動きがあるが、スキル可視化が不十分な日本では盛り上がりに欠ける。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査で所定内給与を比較した。伸び率が顕著なのが「タクシー運転者」で40%増えた。とび職・鉄筋工・型枠工など「建設軀体工事従事者」は18%増え、事務職を含む全体平均(7%増)の伸びを上回った。一方で警備員(3%増)や板金従事者(1%減)は平均を下回った。
都内で働く30代のタクシー運転手は25年8月、不動産営業から転職した。タクシー運転手の知人が月収100万円近いと聞き、歩合制で高収入を得られることに魅力を感じた。勤務間インターバルの確保など労働時間規制が厳しく1カ月の半分程度しか勤務できないが、「すでに前職の倍近い収入を得ている」という。
タクシー運転手の環境は新型コロナウイルス禍を経て大きく変わった。コロナ収束後の外国人観光客の急増で需要が拡大して人手不足が加速。歩合制を取り入れるタクシー会社では努力次第で高収入を得られる。東京タクシーセンター(東京・江東)によると、都内法人ドライバーの平均年齢はコロナ前に比べて2歳若返った。
ブルーワーカーはスキルが認められれば高収入を得やすいとあって海外で見直し機運が高まっている。日本でも建設工事現場で働くとび職や鉄筋工、型枠工など一部の技能職で賃金が上がり始めたが、タクシー運転手などを除いて人材流出に歯止めがかからない。違いは入職後に持続的に高年収を得られる「夢」を描きにくいことだ。
その理由として、建設現場の現業職で構成する全国建設労働組合総連合(全建総連)の松葉晋平・技術対策部長は「能力の可視化が遅れていることが大きい」と見る。職人自身が自分の持つスキルの市場価値が分からず、適正賃金が見定められない。
海外の賃金制度に詳しい青山学院大大学院の須田敏子教授は「英国やマイスター制度のあるドイツは職業資格が細かく可視化され、賃金に自然とひも付く。日本は職業資格が未発達でスキルの可視化ができておらず、交渉力もうまれない」と指摘する・・・
・・・欧米では未経験者の育成体制も整っている。米国の技能者養成システム「アプレンティスシップ制度」に詳しい筑波大学の藤田晃之教授は「高卒以上の未経験者が長期間かけて、有給でスキルを身につけられるため入職しやすい」と解説する。
肝は複数会社を渡り歩く実地訓練で全米共通のスキルを身につけられることだ。「育成を担う企業には能力評価の透明性があり、その評価は他社でも通用する」(藤田氏)。不透明でその企業内でしか通用しない日本の能力評価とは全く異なる。
ブルーワーカーの賃金上昇率は米国の方が高い。米労働統計局によると、大工の年収中央値は24年に5万9310ドル(936万円)で20年比20%増。日本の所定内給与(12%増の月額30万1200円)の伸び率を上回る・・・