池本大輔著『サッチャー』

2026年1月20日   岡本全勝

池本大輔著『サッチャー「鉄の女」の実像』(2025年、中公新書)を紹介します。
宣伝文には、次のように書かれています。
「サッチャーは、20世紀後半を代表する政治家だ。1975年に保守党党首となり、79年にはイギリス初の女性首相に就任。「鉄の女」の異名をとり、10年以上在任した。サッチャリズムと呼ばれた政策は、「英国病」を克服したと言われる一方、レーガン米大統領とともに新自由主義の急先鋒だとして批判も招いた。本書は、激動の生涯を追い、経済から外交までの政策を俯瞰したうえで、彼女の「遺産」を浮き彫りにする。」

サッチャー首相は、私にとっては同時代人でしたが、すでに歴史になりました。新書なので、若い人には適切な入門書です。
政治家の場合は、どのようにして上り詰めたかという過程もありますが、伝記として取り上げられるのは、困難なことを成し遂げたからでしょう。彼や彼女は何に対して戦ったか、どのようにして困難を乗り越えていったか、そして何を成し遂げたかです。
サッチャー首相の評価はさまざまありますが(最近も見直しがされているようです)、英国病と戦い、新自由主義的改革を進めた点では、一致しているでしょう。フォークランド紛争までは、支持率も高くなく、政権運営に苦労していたのです。労働組合との対決も、困難なことでした。それらを乗り切ることで、支持を固め、改革に進みます。

伝記について考えてみました。
伝記は、その人の一生を描くのですが、その対象に行動と内面があります。どのような環境で育ったのか、また大きな仕事を成し遂げる人格はどのようにできたかです。その際に、行動は外から見てわかりますが、内面は他者にはわかりません。本人が執筆する回顧録には書かれる場合がありますが、それも「後付け理屈」となることもあります。そして政治家の場合は、難しい判断をしなければならない場合に、どのように考えて、また周囲との関係を考えて、そのような結論に至ったか。それも重要です。
もう一つは、その人の行動を描くだけでは、評価になりません。どのような課題に対してどのような判断をしたのか、それがどのような変化を社会にもたらしたかです。本人の行動を描くだけでなく、外部への影響を描かなければなりません。ここにも「内包と外延」があります。

サッチャー首相に関しては、次のような記事も書きました。「サッチャー改革の見直し」「サッチャー首相の評価、敵は身内に