連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第246回「政府の役割の再定義ー「自ら考え自ら行う」自治体への転換」が発行されました。地域での大きな課題である、人口減少と活力低下について議論しています。これまで、国による国土政策とともに、地方自治体での独自の取り組みとそれを支援する政策の流れがありました。後者の始まりとなった、ふるさと創生事業について説明しています。
私は1990年から、当時の自治省財政局交付税課長補佐として、その算定に携わりました。
それまでの交付税の算定の哲学は、全国「一律」の行政サービスを保障するというものだったのに対し、一連のふるさと創生事業は各自治体が知恵を出した「個性」を支援するものです。地方交付税制度と算定の担当者として、それまでは「どの自治体でも同一の行政サービスを提供できるようにするのが地方交付税の役割」と教えられ、そのように説明していました。ところが、ふるさと創生事業によって、「自治体の創意工夫を応援する」「自治体間に差をつける」ことになり、どのように説明したら良いのか悩みました。学者の方々の知恵も借りて、地方交付税の「哲学の変更」をすることにしました。
今では隔世の感がありますが、国の指示を実行することに慣れていた地方自治体が、自ら地域の振興を考えることは、当時としては画期的なことでした。
それまでの地方行政は、全国どの自治体でも同じような行政サービスを実施できるように、国が基準を決め、国庫補助金と地方交付税とでその実施を担保していたのです。そして、経済発展の果実である税収を財源にして、それに成功しました。経済格差によって財政力に大きな違いがある地方自治体間で同じ行政ができるようにしたことは、世界でも先駆的で素晴らしいことでした。
しかしそれはまた、地方自治体が国の指示に沿って動くことを「制度化」してしまいました。それは固定観念となって、国民の多くがそれを疑わなかったのです。その結果、「自治体」と呼ばれつつ、その自由度は限られていました。
ふるさと創生事業を実施して、見えてきた問題もありました。ふるさと創生1億円事業は、各自治体が1億円を何に使うか、それぞれに知恵を出さなければならなかったのですが、そのような経験がない自治体にとっては難しいことでした。「お金がないから、自由な事業ができない」と言っていたのですが、突然、財源をもらっても、どのように使えばいいか分からなかったのです。
経験とともに不足していたのが、人材でした。それは、地域で地域おこしの中心となる人材と、その活動を誘導し吸い上げる行政側の自治体職員です。