連載「公共を創る」第242回

2025年12月11日   岡本全勝

12月11日に、連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第242回「政府の役割の再定義ー反転攻勢に必要な縮小思考からの転換」が発行されました。
政治主導がうまくいっていない理由を議論しています。その一つは、1990年代に行われた政治改革・選挙制度改革の限界です。もう一つは、20世紀第4四半期の言論空間を支配した「新自由主義的改革」という思想です。

小さな政府論の成功が日本にもたらした最大の代償は、企業、行政、社会、国民に、縮み思考を植え付けたことかもしれません。官民を挙げた「縮小の思考」は社会の通念となり、合理化の目標を達成した後も、企業が新規事業へ挑戦することや、役所が新しい政策を企画することをためらわせました。日本経済が停滞している間に、ほかの先進国に置いていかれただけでなく、後発国にも追い抜かれました。国際化が進んだ自由主義経済においては、立ち止まればあっという間に周りが進んでいくのです。

ところが、そのような社会の雰囲気に染まらず、挑戦を続けた企業や人々もいたのです。その一つが、インターネット上の娯楽動画など「コンテンツ」と呼ばれるものです。コンテンツ産業の海外売上高は2023年で過去最高の5・8兆円。鉄鋼産業や半導体産業を上回っています。
個人でも、世界で活躍する日本人が増えています。その代表がスポーツの分野です。米国のプロ野球大リーグ(メジャーリーグ)での日本人選手の活躍は、大きなニュースになっています。ほかにも、男女のプロゴルフツアー、欧州でのプロサッカーリーグ、フィギュアスケートなどなど。かつては世界上位の選手には追い付けないと思われていた種目で活躍している選手が増えました。彼ら彼女らは、国内で勝つことに満足せず、また「できっこない」という固定観念に負けずに、世界で挑戦することを選びました。そして、実績を生んでいます。