人工知能が要約を作ってくれる

人工知能が、長い文章の要約を作ってくれます。便利なものです。でも、人の能力向上にとっては、困ったことです。

かつて部下に、彼が出席した会議の概要を報告してもらおうとしたときのことです。その求めに対して、彼は「待ってください、全文を起こしていますから」と答えました。私は「詳しいことは不要なので、要点だけ教えてくれ」と言ったのですが、「全文を文字起こしする方が楽なので、待ってください」と言ったのです。
今なら、議事録作成を機械がしてくれて、要約も作ってくれるのでしょう。私は使ったことがないので、その要約が上司の求めている要求を満たしているかはわかりません。でも、いずれ能力が向上して、良い要約を作ってくれるのでしょう。
それで良いのでしょうか。職員の能力は向上しません。

報道機関の方と話していると、記者たちも人工知能を使っているようです。確かに、事件などの報告なら、あまり知恵も使いません。5W1Hが入っていれば良いのですから。
幹部曰く「下手な記事を書く記者なら、人工知能の記事の方が読みやすい」。
ここでも、記者の能力は向上しないでしょう。

記者会見で、一生懸命、発言をパソコンに打ち込んでいる記者がいます。私は「人間ワープロになるな」と意見していました。もうそんなことはしなくても、機械が文字起こしをしてくれるでしょう。間違っているか所だけ、手を入れれば良いのです。
私が記者に求めたのは、「質問と再質問を考えよ」ということです。
記者がつける付加価値は、発言を文字にして伝えることではなく、その発言の意味を考え、隠されていることを追及することでしょう。「頭を使う」ということはそういうことです。新聞の機能はニュースを伝えることではなく、解説にあります。

機械がすること・できることと、人間がすること・人間にしかできないことが問われるようになります。