管理職や幹部になると、部下だったときと異なった「仕事」が出てきます。その一つが、たくさんある仕事について優先順位を付けることです。どの仕事から急ぐか。自分でするか部下に任せるか、任せるとしたらどの範囲までか。誰に、どの仕事を任せるかなどです。
部下も、与えられたたくさんの仕事の中で、優先順位をつける必要があります。しかし、それは上司と相談できますし、処理しきれないときは「もう無理です」と言うことができます。
それに対して管理職は、はるかに多くの仕事を部下職員に割り振らなければなりません。それらの仕事の作業量の多さ、難しさ、急ぎの度合いを、判断しなければなりません。単純に急ぎの案件と締め切りまでに余裕がある案件の比較なら簡単ですが、重要度の比較が難しい案件に、順位をつけなければなりません。他方で、各職員の抱えている仕事量や各人の能力を見極めなければなりません。
これは、有能な部下の延長にはない能力です。「鬼軍曹」の失敗は、『明るい公務員講座 管理職のオキテ』でお教えしました。
そのような職場内での検討とともに重要なのが、上司や関係先といった外部との相談と調整です。
職場内での検討が行き詰まったとき、抱えている案件を先送りできるかや、「手付け」「時効中断」(ひとまず未完成で提出し、完成を待ってもらう)で許してもらえるかを、その人たちと交渉しなければなりません。
これが、管理職の重要な役割なのです。
「調子の良い管理職」は外面が良く、幹部や取引先に良い顔をして、たくさんの仕事を引き受けてきて、それを部下に押しつけます。そして部下職員が行き詰まっても、幹部や取引先に掛け合ってくれないのです。