地方版ハローワーク

8月23日の日経新聞に「地方版ハローワーク、女性や高齢者の働き手発掘 就職率は国を上回る」が載っていました。これまで地方自治体の関与が少なかった(できなかった)分野の一つが労働政策です。

・・・自治体が運営する無料の職業紹介所「地方版ハローワーク」が眠れる働き手を発掘している。5月時点で全国に992カ所あり、島根県は県と全19市町村が設置する。地域課題を解決する自治体の政策と連動した職業紹介で、働く意欲のある高齢者や女性、障害者らの背中を押す。就職率は2019年度以降、国のハローワークを上回る。

地方版ハローワークは、地場産業の振興や介護・福祉の人手不足解消、移住促進といった地域課題を解決する政策の効果を高めるため、自治体が独自に職業紹介する。
地域のニーズをきめ細かく吸い上げて雇用に結びつけ、23年度の就職率は全国で31.3%。民間の職業紹介が存在感を増し、就職件数の減少が続く国のハローワーク(26.8%)より4.5ポイント高い。
都道府県別に自治体の設置割合をみると、島根県が100%で最も高く、鹿児島県の65.9%、大阪府の61.4%が続く。

島根県益田市は介護現場の課題解消をめざし地方版ハローワークを活用する。高齢者福祉課が実施する入門研修やUIターン人材への働きかけと並行し、課内に設置した「無料職業紹介所」が介護の周辺業務の求人と求職者をマッチングする。
施設の部屋の清掃や食事の片付け、利用者の話し相手など、資格が不要な周辺業務を担う人材を多数確保することで、資格のある職員が食事や入浴の介助、専門的な知識の必要な業務に集中できる環境を整えるのが狙いだ。
経験や年齢、勤務時間、資格の制限を設けず「介護お助け隊」として募集したところ、4年間で延べ97人が登録し、43人が職を得た。24年度の就職率は50%だった。
益田市は広報紙やチラシのほか、介護保険や家族の介護の相談で市役所を訪れた高齢者らに地方版ハローワークを紹介して周知してきた。「普段から足を運ぶ市役所の窓口に開設したことで、働きたくても一歩を踏み出せなかった高齢者のニーズを掘り起こせた」(高齢者福祉課)・・・

・・・中央大学の阿部正浩教授は地方版ハローワークについて「地域の課題やニーズをくみ取る自治体の施策に合わせた活用は効果が期待される」と評価する。
そのうえで「高齢者や女性の就職支援は国のハローワークも力を入れ、人材を奪い合う構図もある。地方版の一部は開店休業状態だ。地域の事情を詳しく知る強みをマッチングに生かすことが、地方版にはさらに求められる」と話している・・・