私は、2001年に実施された中央省庁改革に参事官として従事し、その後、地方分権改革や三位一体の改革にも関与しました。小泉内閣での経済財政諮問会を舞台にした改革も、目撃しました。最近の政界や官界、言論界を見て思うことは、当時ほどの「改革に対する熱」がないことです。
「低温経済」という言葉がありましたが、「低温政治」「低温議論」という言葉も必要なのでしょうか。
低温経済でも革命も起きず、それを理由にした政権交代も起きず、社会に大きな混乱も生じませんでした。非正規雇用が増え、こどもの貧困、格差社会という大きな問題が静かに進んではいるのですが。大恐慌のような経済破綻ではなく、経済は成長しない代わりに、大きな低下もしなかったのです。
「ぬるま湯」という表現がありますが、よく当てはまります。適温ではないのですが、飛び出すほどの冷たさではありません。ところが、世界では各国がどんどん成長し、日本は置いて行かれたのです。国内でぬるま湯に浸かっているかぎりは、気がつかないのですが。家電産業や自動車産業が国際競争に敗れ、工場が閉鎖されることで、その実態がわかります。
政治や言論界での改革議論の停滞も、同じでしょう。国際的には「ガラパゴス政治」を続け、増税せずに大きな支出を続けることで、とんでもない借金王国になっています。国債が暴落するまで、ぬるま湯に浸かっているのでしょうか。
社会に元気がなくなるということは、このようなことでしょう。しかし、若い国民は、30年前の時代、日本社会に活力があった時代を知らないのです。このような状態が普通なのだと思ってしまうのでしょう。
海外に出たり留学したりすると、日本の特殊性が見えるのですが。留学者数も減っているとのことです。
「努力が報われない日本社会?」も、これと関係しているのでしょう。
急激な変化には、政治家も世論も盛り上がりますが、緩慢な変化には対応は鈍いようです。また、適確な処方箋がないことも、対応を遅らせているのでしょう。研究者や報道機関の奮起を期待します。