連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第178回「政府の役割の再定義ー職員育成の見直しに向けて」が、発行されました。前回から、官僚の「やりがい」を議論しています。
霞が関全体の政策を見てみると、重要な課題が変わってきたことも挙げられます。例えば、発展途上期は、道路整備や義務教育に当たる教職員の確保は国家にとって大きな課題でした。しかしそれらの仕組みが確立し、定着しました。国が基準と計画をつくり、財源を確保しておけば、自治体に任せても問題なく運営されるでしょう。国民は官僚に対し、いつまでも補助金配分作業を続けることを期待していません。官僚には、そのような作業を手放し、能力を新しい企画に使ってほしいです。
次に雇用者側が取り組むべきは、育成の見直しです。かつては意識しなくても、適当な競争と職場での研鑽によって組織にとって必要な人材は得られると考えられ、実際にそれでほとんどの組織は対応できてきたのです。しかし、雇用者側にとっても働く側にとってもうまくいかなくなり、このままではだめだという意識が広がっています。
一言で言うと、これまでの技能の習得は「周囲の先輩を見て覚えよ」であり、育成手法は「ところてん式の人事異動」でした。それは典型的なオン・ザ・ジョブ型研修と画一的な登用方式ですが、実際には本人の適性や希望はあまり意識せず、能力開発は本人任せで、要領よく前例通りの仕事を覚えることを求めていただけでした。雇用側としての戦略や配慮より、人事担当の効率性を重視した人事行政だったと言わざるを得ません。
さらに、人材育成だけでなく、「人材確保」と「職場環境の整備」にも問題は拡大しています。
職場で求められる専門性について、政策分野別専門性とともに、機能別専門性についても指摘しました。すなわち前者を縦割りとすると、後者は横割りです。会計、発注、公金徴収、調査・統計、文書管理など、どの分野にも共通する定型的な業務です。これらの業務が民間委託できないのは、本来事務と一体をなしているからです。
これまでは、その席に長く座った職員が専門家となっていたようです。それではすまなくなりました。特に技能の習得が必要となっているものに、電算化、文書管理、検査監督業務などがあります。