連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第153回「課題の転換を迫る背景」が、発行されました。
前回まで、政府の役割を再定義する前段として、その分類を行いました。ところが社会の新しい課題の多くは、これまでの分類にうまく当てはまりません。
これら新しい課題の多くは個別ばらばらに生じているのではなく、共通した背景と原因を持っているというのが私の分析です。この大きな動きを押さえた上で、場当たり的でない国家の役割と機能の見直しが必要なのです。それは、行政分野の拡大や手法の改善などという微修正では済まず、市民像や公私二元論といったパラダイム(ものの見方、考え方の枠組み)の転換が必要となります。
これまで述べてきた国家の役割の見直しを迫る背景や見直しの方向などを順次、要約します。
まずは、課題の転換を迫る背景です。大きな課題であった貧困からの脱出に成功したのに、なぜ社会に不安が生じているのか。それは、経済発展によって私たちの暮らしが変化したことで、新しい不安が生じたためです。
そして、日本においてこのような不安が顕著なのは、成熟社会に見合った意識への転換が遅れているからです。それは、いくつかの場面で現れています。