定時に退社すると批判された。変えてやる

10月5日の日経新聞「私の課長時代」は、渋谷直樹・NTT東日本社長でした。

・・・民営化1期生で、あらゆる仕事に前例がありませんでした。会社の転換期に新しいプロジェクトを任せてもらい、育てられた自覚があります。その経験から、人材育成では部下を信頼し、仕事を任せることを強く意識しました。部下の提案にはとにかく全部、「ええやん。やってみよう」と。課長時代の送別会で色紙をもらった際、部下の間で「ええやん課長」と呼ばれていたことに気づきました。

この考えには原点があります。入社して間もない頃、業務効率にこだわり、集中して仕事をこなして定時に退社していました。すると、上司から「君はいつも早く帰るね」と批判され、全く評価されずにショックでした。当時、上司はまず部下にダメ出しをする組織風土があり、「自分が変えてやる」と誓いました。

誰でも意見を言いやすい前向きな空気感があると、新しいアイデアが生まれやすいです。「予算や人手が足りない」「前例がない」など、できない理由を考えるより、部下にはクリエーティブな人材になってほしいと願ってきました。
社長になってもキャッチフレーズは「ええやん」です。課長時代はリーダーの原点で、成長のチャンス。今は課長になりたくない人も多いと思いますが、固定観念にとらわれる必要は全くありません。ぐいぐい引っ張るだけでなく、肩の力を抜き、部下の潜在力をどんどん引き出すリーダーも良いと思います・・・

自治体研修のあり方2

自治体研修のあり方」の続きです。
「人材育成の重要性」を首長さんも幹部も発言されますが、多くの自治体でそれが実行されているようには思えません。問題は、予算削減による研修機会の削減と、適切な研修がなされていないことです。

前者については、企業以上に自治体の力は、職員の能力とやる気に左右されます。そして国に言われたことをしていれば良い時代が終わり、これまで以上に職員養成が重要なのです。
この20年間に研修予算をどれだけ増やしたか減らしたか、各自治体で調べてみてください。多くの自治体で、財政課は経費削減をしていると思います。その効果は直ちには現れないのですが、長期的に効いてきます。

後者については、専門分野の知識の研修はそれなりの内容が行われているようですが、人材育成や管理職研修は、教材も教師も不十分なようです。
本屋に並んでいるリーダーシップの教科書は、一般の公務員にほとんど役に立ちません。幹部などの経験談では、十分ではありません。成功した人の自慢話でなく、悩んでいる職員やうまくいかない職員への手当が必要なのです。
私が「明るい公務員講座」3部作を書いたのは、「公務員の教科書」がないので、それをつくろうとしたのです。「管理職の必須知識講座」も、そのような意図です。
国家公務員においても、十分ではありません「国家公務員のためのマネジメントテキスト」。市町村アカデミーも力を入れますが、内閣人事局と総務省公務員部に頑張ってもらわなければなりません。

中国の新幹線車両を埋める日本の油圧ショベル

9月27日の朝日新聞夕刊「新幹線と日中半世紀5」は、「「大躍進」そしてあの事故」でした。
日本の技術移転を受けて発展した中国の新幹線。2011年7月に大事故を起こします。それも問題でしたが、その後始末がびっくりでした。事故を起こした先頭車両を、近くの畑に埋めてしまったのです。覚えておられる方も多いでしょう。

ここで紹介するのは、その際の写真です。車両を埋める作業をしている油圧ショベルが6台ほど写っています。手前から、日立、小松、住友、神戸製鋼の文字が読めます。当時は、中国で使われる重機が日本製だったのですね。まだ10年前の話です。

自治体研修のあり方

専門誌『地方行政』の10月3日号に、高嶋直人・人事院公務研修所客員教授が「自治体研修はいかに在るべきか 現状の課題分析と基本認識」を書いておられます。自治体の人事、研修関係者には、ぜひ読んでいただきたいです。

企業と役所のマネジメントは異なる。ところが、自治体では職員研修を民間研修会社に委託する場合が多い、また自治体の研修所でも外部講師を使う場合が多い。それでは、成果が出ていないのではないかと、指摘しておられます。
公務員の経験も知識もない人からマネジメントを学ぶという、不思議なことが行われている。「野球のコーチにサッカー出身者がいない」と、たとえておられます。外国の公務員研修では、教える人も公務員が多いとのことです。日本には公務員出身の教育者が少ないとも、指摘しておられます(少ない例外として、私の名前を挙げていただきました)。

民間に学ぶべきことは多いが、まずは公務員に必要なことを学んだ上で、民間から学ぶべきだ。
定員削減によって、研修も外部委託された。しかし、それは研修実施のノウハウを奪い、研修担当者が入札担当者に変化してしまった。研修担当は職員育成の重要な役割もあるのに、自らの機会を削減している(これは、ほかの企画業務にも当てはまります)。
このような研修の外部委託による弊害を、いくつも指摘しておられます。ご指摘の通りです。
この項続く

情報は爆発しても、人が咀嚼できる量には限りがある

9月24日の朝日新聞「はじまりを歩く」は、「日本初のホームページ」でした。今や誰もが利用する、しかも毎日何度も使うホームページですが、日本初は1992年だそうです。まだ30年なのですね。
私がこのホームページをつくったのが、20年前です。いろいろな組織のホームページを閲覧するだけでなく、素人でも簡単につくることができます。
記事に、次のような話が載っています。

膨大な情報の海から、どうすれば必要なものを効率よく見つけられるかも難題だ。05〜10年度に文部科学省の「情報爆発プロジェクト」という研究事業があった。世界中でやりとりされる情報の爆発的な増大にどう対応するかを多面的に研究した。
まとめ役だった喜連川優(きつれがわまさる)さん(67)はいま、東京都千代田区にある国立情報学研究所の所長を務める。
情報爆発に私たちはどう向き合えばいいのか。そう尋ねると、「それが分かれば苦労はありませんよ」と笑いながら、こう話してくれた。
「どれだけ情報が増えても、一人の人間が咀嚼できる量には限りがある。私たちは、より優れた検索の仕組みを開発しようとしています。情報の供給者も、話題のトピックについて様々な視点を整理し、分かりやすく伝えるキュレーション(情報の収集・整理)の役割がますます重要になるのではないでしょうか」