「自己責任」かざした自分が弱者に

8月1日の朝日新聞「元首相銃撃 いま問われるもの」、中島岳志さんへのインタビュー「「生きづらさ」の原因求め、誰かを敵視」から。

――生きづらさを抱えている人たちのために必要な政策は何ですか。
一つは「リスクを社会化」していくこと。セーフティーネットを強化して、所得の再配分機能を高めることも必要です。もう一つは「社会的包摂」。孤立している人を社会のなかに包み込んでいくことです。
ただ、政策論だけではやはり限界があります。人間観を根本的に見直さないといけないのではないかと思っています。山上容疑者を含め、いまの僕たちは、自己責任という呪いのような人間観にとらわれていると考えるからです。

――どうしたらいいのでしょう。
山上容疑者のものとみられるツイートには、こうあります。「何故かこの社会は最も愛される必要のある脱落者は最も愛されないようにできている」。彼にも愛されたい気持ちがきっとあった。でも、弱さはマイナスの価値であると思いこみ、助けを求められなかったのでしょう。
まず弱さを認めること。誰かを頼っていいし、泣きついてもいい。自分の弱さを受け入れるところから、人と人との連帯の可能性が生まれてくると思います。