5月10日の朝日新聞オピニオン欄、日本自立準備ホーム協議会代表理事・高坂朝人さんのインタビュー「加害者、減らすために」でした。
・・・ 少年院や刑務所を出ても行き場のない人を一時的に引き受ける自立準備ホームの全国組織、一般社団法人「日本自立準備ホーム協議会」が設立された。立ち上げに尽力して代表理事に就いたのは、逮捕歴15回の元非行少年、高坂朝人さん。目指している「加害も被害も減らすための再犯防止」には、何が必要なのか・・・
――寝泊まりする場所を提供する自立準備ホームは、いつから?
「15年12月に始めました。NPOの活動の中で、少年院などを出ても帰る場所がない少年たちを引き取る必要に迫られてアパートの部屋を借り、自立準備ホームとして登録しました。入所者は半年までいられ、家賃や食費、光熱費などの本人負担はありません。僕たちは彼らに食事を届け、1日1回は会って話をし、自立の支援をします。今は9室あり、これまでに約80人が入居しました」
「食費や宿泊費など、1人あたり月14万円強の委託費が国から出ますが、運営はとても厳しいです。入所者がいなくても家賃は発生します。夏に逮捕された人がサンダルに軽装のまま寒い時期に出てくるなど、着の身着のまま入ってくる人も珍しくありませんが、被服費は出ません。布団や家具、家電、シャンプーなどの日用品も全部僕たちが用意します。部屋の初期費用で25万円、日用品などは新しい入所者が来るたびに2万~3万円はかかります」
――障害者支援もしています。
「発達障害などがある少年は少なくありません。自立準備ホームは半年しかいられませんが、半年以内に一般就労するのも、その間にアパートを借りる金をためるのも非常に難しいのが実情です。そこで18年に障害者のグループホームも始めました。自立準備ホームからグループホームに移って2~3年ほど生活して、お金をためてから自立しています。20年からは就労継続支援B型事業所も始めました。自立準備ホームの夜ごはん作り、ストラップやブレスレット作りなどをしています。いずれも必要に迫られて始めたことです」
――全国組織の目指すところは何ですか。
「自立準備ホームは、これまでの更生保護施設だけでは足りないと法務省が始めた制度です。更生保護施設は集団生活が基本で、過去に施設で問題を起こした人などは受け入れを拒否されることもあります。酒や携帯電話は禁止のことが多く、門限があれば深夜のアルバイトはできません。国から費用が出るのだから、それぐらい厳しいのは当然だという意見もあると思いますが、本人にしてみれば『制約が多くて入りたくない』となる。住むところがなければ、再犯の可能性は高まります」
「一方、自立準備ホームは自由度が高い。たとえばうちのホームはアパートで一人暮らしで、20歳以上なら酒もたばこもOKです。宿泊はダメですが、友人が遊びに来るのも構わない。住まいの選択肢は多い方がいいはずです。もちろん更生保護施設の方がいいところもあり、それが合う人もいます。更生保護施設と自立準備ホームの連携が、絶対に必要です」
<自立準備ホーム> 行き場のない、刑務所や少年院からの出所者・出院者を受け入れる宿泊場所。全国に103カ所ある更生保護施設以外にも多様な受け皿を確保するとして、法務省が2011年に導入した。保護観察所に登録した事業者が運営し、保護の委託を受ける。入所者は最長6カ月まで生活でき、食事の提供のほか就労や自立の支援を受ける。20年度は1719人が入所した。