年別アーカイブ:2021年

黒江・元防衛次官の回顧談6

2021年8月21日   岡本全勝

「黒江・元防衛次官の回顧談5」の続きです。失敗だらけの役人人生、追補9は「信念岩をも通す(下)有事法制と平和安全法制」です。内容は本文を読んでいただくとして。政治主導と官僚の役割の実例が語られています。

基本的な政策で国内に意見対立がある、しかし差し迫った必要性がある、これまでの政策の方向を変える。このような場合には、官僚では結論を出すことはできません。準備をしつつも、政府与党で方針を決める必要があります。そして方向が定まったら、それに従い官僚が法案を用意し、与党の了解を得る。

さて、非常に興味深く勉強になった黒江・元防衛次官の回顧談。今回で終わりのようです。官僚の役割としても、重要な記録です。この連載が本になること、そしてまた続きが書かれることを期待しています。

・・・たまたま今年は、私が防衛庁に勤め始めてからちょうど40年の節目に当たるのですが、この間に我が国を取り巻く安全保障環境が大きく変化してきたことは追補版で紹介した通りです。特に昨今は、従来のようなOn o∬がはっきりした活動ではなく、誤解を恐れずに言えば「常在戦場」的な活動が要求されているように思います。これは、例えば尖閣諸島をめぐってグレーゾーン状態が常態化していることや防衛省のHPや各種システムが日常的にサイバー攻撃の脅威にさらされていることからも明らかです。「平素は部隊の練成に努め、一朝事ある時に即応する」という考え方ではもう情勢に対応出来ないのではないかと感じます。このような難しい状況に対応するためには、常に情報収集・分析を怠らず、政策決定権者と状況認識を共有し、適切なタイミングで選択肢を提供し、必要な命令を即座に得ることが必要不可欠です。不断の改善は必須だとしても、これらの業務に必要な制度や組織などの基本的なインフラは既に整備されています。これかりま、こうしたインフラを最大限に活用して日々の事態に対応して行くことが求められているのです。運用部門での仕事について紹介した際に「結果を出す」ことの重要性を強調しましたが、今はさらに「スピーディに」結果を出さなければなりません。若い皆さんがこなさねばならない仕事は、私の現役時代よりもはるかに複雑で難しくなっていますが、結果を恐れずにスピード感をもつて取り組んで頂くことを切に祈念します・・・

「富士山噴火 その時あなたはどうする?」

2021年8月21日   岡本全勝

鎌田浩毅先生が、また新著を出されました。『富士山噴火 その時あなたはどうする?』(2021年、扶桑社)。早速、アマゾンでは、防災分野でベストセラー第1位になっています。

なかなか刺激的な表題です。しかし、歴史を見ても、避けられない災害です。その時あなたはどうするか。本書では、最初に漫画が出てきます。わかりやすいです。
小規模な噴火と火山灰は、私は鹿児島で桜島の火山灰を経験しました。たぶん、富士山噴火とは比べものにならない量なのでしょうが、生活に支障を来します。
東京が被災地になることは、これまでの災害とは違った影響を持ちます。
一読をお勧めします。

鎌田浩毅先生は、相変わらず精力的に活動しておられます。

連載「公共を創る」第90回

2021年8月20日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第90回「社会の課題の変化―顔の見える関係を基に手を差し伸べる」が、発行されました。前回に引き続き、孤立問題に対する安心提供手法の変化を説明しています。

人生につまずいた際にどうするかという知識と知恵を教えること、孤立に陥る前の「手すり」が必要です。そして陥った際に、どのような支援をするか。
例えば、ニートやホームレスの若者にも、次のような違いがあります。
・自ら就職先を見つけられない若者で、「きめ細かな情報提供」が必要な場合
・人間関係が苦手な若者で、「社会力をつけること」が必要な場合
・生きていくことに喜びを見いだせない若者で、「生きていく力を身に付けること」が必要な場合
すると、それぞれの場合で支援内容が異なります。
また社会生活での自立には、本人の意欲が必要です。周囲からの支援だけでは達成できません。ここにも、難しさがあります。

そして、新たに発見された社会的排除は、本人側より、周囲の側に原因があります。社会的包摂には、社会の側の意識の転換が必要です。

輿論と世論

2021年8月20日   岡本全勝

8月17日の朝日新聞オピニオン欄、佐藤卓己・京都大学大学院教授の「五輪に見た、内向き日本」から。

――コロナ禍での五輪開催には反対の声も少なくありませんでした。朝日新聞は5月、「中止の決断を首相に求める」という社説を掲載しました。
「ただ、社説が出る前から、五輪への支持率が低いことは世論調査で明らかになっていました。調査結果の報道前に書けば勇気あるオピニオン(輿論〈よろん〉)だったと思いますが、国民感情を盾に社説を出したように見えました。世間の空気(世論〈せろん〉)を反映しているだけだから大丈夫、という心理も働いていたように感じます」

――新聞は情緒的な世論を後追いしたように見える、と。
「いまはひとくくりにされていますが、大正期までの日本社会では公的意見である輿論と、大衆の心情である世論は区別されていました。世論は世間の評判、付和雷同というニュアンスを持つ一方、輿論は異なる少数意見を想定し、説得すべき他者を見すえた多数意見という意味がありました。民主主義では輿論によって世論を制御することが肝要なのです」
「かつては新聞が、世論を反映する機能を担うことに一定の意味がありました。しかし、いまはSNSで個人が自由に発言できる時代です。新聞は世論反映のメディアにとどまっていてよいのでしょうか。これからの新聞は、討議に導き輿論を示す公器をめざすべきです。時には、世論に反してでも主張する。そうしなければ、いつか世論に縛られて、自分の意見が言えなくなってしまうでしょう」

沖縄県庁管理職研修講師

2021年8月19日   岡本全勝

今日は、沖縄県庁管理職研修の講師を務めました。久しぶりに沖縄に行くことを楽しみにしていたのですが、こちらもコロナの影響で、東京の会議室で話して、現地で見てもらうという遠隔講義です。

内容は、自治体管理職の危機管理についてです。東日本大震災での体験を元に、想定外は起きる、その時に自治体は何をしなければならないかを話しました。
想定外の危機は、それぞれに性質が異なるので、対応策は異なります。しかし、基本動作は共通しています。
他方で、大雨災害などは、その自治体にとって初めてのことでも、各地で頻繁に起きているので、いまや想定外とは言えなくなりました。他の自治体の経験を学んだ上で対応できます。また、そうしなければなりません。
新型コロナウイルス感染症も、当初は未知の病気でしたが、1年半経過して、原因や対策がわかりました。これも大変な危機なのですが、短期間のうちに状況を把握し対策を打つ災害とは、状況が異なります。

基本は、取り組むべき課題を分類すること、緊急度と誰が行うかです。その全体像を把握し、関係者に理解してもらうことです。