年別アーカイブ:2021年

省庁改革本部の同僚

2021年2月18日   岡本全勝

2月18日の日経新聞「交遊抄」は、米女太一・アサヒ飲料社長の「民間からの出向組」でした。
・・・20年以上前、それまでアサヒビールで人事や営業に携わっていたが、民間からの出向として内閣の中央省庁等改革推進本部事務局で働くことになった。そこで出会ったのが日本商工会議所理事の荒井恒一さんだ。当時、私たちは霞が関の官庁組織を再編する仕事に携わっていた。法制局で法案を審査してもらうと、多くの指摘が返ってくる。へとへとになってデスクに戻ると、隣で黙々と仕事をしていたのが荒井さんだった・・・

2001年に実施された省庁改革の準備のために、省庁改革本部事務局が作られたのは、1998年6月でした。各省と民間から、職員が集められました。米女さんも、その一人です。
私は、富山県総務部長から、事務局の減量担当参事官に赴任しました。米女さんとは、班は別でした。私たち官僚でも、この仕事はきつかったので、民間からの出向者は、もっと苦労したと思います。
私の減量班も、20年経った今も年に数回集まっています。コロナでしばらく開催できず、コロナが収束するのを待っています。

好評、チェシャー猫

2021年2月17日   岡本全勝

チェシャー猫」に、読者からの反応がありました。
・面白かったです。
・説明がないとわかりません。
・チェシャー猫は、ニヤニヤ笑っているはずなのに、この絵ではノホホンとしていたり、嫌な顔をしています。

国民に負担を強いる、差をつける

2021年2月16日   岡本全勝

治療の選別」の続きであり、「世論調査項目、賛成ですか反対ですか」「憲法を改正できない国、その2」の続きにもなります。
国民に負担を強いることを考えてみます。それを喜ぶ人は少なく、どのように合意を取り付けるかが、政治の仕事になります。
それは、増税や公的保険料の値上げといった金銭負担だけではありません。外出禁止、行動制限、営業自粛など、国民の行動を制約する場合もあります。
負担そのものが反対されるだけでなく、誰にどのように負担を分配するかが議論になります。「公平」は一律に決まりません。利益を配る際にも、国民の反発を引き起こすことがあります。困っている家庭に30万円配るか、全員に10万円配るかは、これに当たります。

困っている人を助ける、それが金銭給付の趣旨でしょう。そして原資が限られているなら(通常はそうです)、なるべく効果があるように絞り込むべきでしょう。特定定額給付金の決定過程は、この問題を考えさせます。当初、収入が減った家庭を対象に30万円を給付する案でしたが、最終的には全世帯に10万円を配ることになりました。高額所得者をも、対象としたのです。

戦後日本が達成した「平等」は、他方で「国民に差をつけることができない」ことをも招いたようです。欧米をお手本に努力した時代は、国民もその憧れに向かって頑張り、また辛抱しました。経済成長期は、その果実を分配することですみました。しかし、成長が止まったとき、高齢化で負担が増える時代には、政治の役割は利益の分配から負担の分配に変わりました。そこに、政治の力量が問われます。

役所で行われる「改革」(組織人員の削減)の際の手法に、一律削減があります。予算要求の際の一律シーリング(予算要求額の上限、例えば前年比5%減とか)もそうです。「みんな一緒です」は受け入れられやすく、しかし説明、説得、判断を放棄した手法です。
その中でも官僚が編み出した「差をつける手法」が、一律削減を大きめに行い、生まれた「財源」を新しい政策や組織に回すことです。

「見えざる手」から「見える手」へ

2021年2月16日   岡本全勝

2月7日の読売新聞あすへの考、小島武仁・東大教授の「マッチング理論――行動する経済学「見えざる手」から「見える手」へ」から。
「保育園の待機児童、臓器移植のドナー(提供者)探し、そして新型コロナウイルスのワクチン接種――。こうした現代の諸課題に対し、経済学やコンピューターサイエンスの知見を基に制度を設計し、最適解を示す「マーケットデザイン」という学問がある。
この分野で「世界をリードするトップ研究者」と評される小島武仁氏が昨年秋、米スタンフォード大教授を辞し、東京大マーケットデザインセンターの初代センター長に就いた。マーケットデザインは2012年と20年にノーベル経済学賞を受賞したが、日本ではまだ聞き慣れない。注目の研究分野のトップランナーが目指す「あす」を聞いた」

・・・経済学の父、アダム・スミスの話から始めさせてください。
彼は、人や企業が自らの利益を求めて行動すれば、需要と供給のバランスで価格が調整され、「見えざる手」に導かれるように経済成長がもたらされると説きました。このように伝統的な経済学は、市場の仕組みを「他から与えられたもの」と捉え、その働きを外側から分析する学問です。
対してマーケットデザインは、市場を「設計(デザイン)できるもの」と考えます。関係する人々の希望や動機付け(インセンティブ)を酌みとりつつ、課題解決に向けて新制度を提案したり、実務の内側で制度を改善したりします。
大きくは、1990年代の米国で携帯電話の電波利用権の競売に成功した「オークション理論」と、比較的最近になって注目された「マッチング理論」に分けられます。私が特に力を入れているのは後者です。
マッチングはもともと数学の理論ですが、様々な条件の下で「人と人」「人とサービス」を結びつけ、限られた資源を効率よく、不満なく、適材適所に配分できる情報処理手順(アルゴリズム)を研究します。好みなどを入力して恋人を探す「マッチングアプリ」がイメージしやすいでしょうか・・・
・・・マーケットデザインが力を発揮するのはこのように、政策的要請や倫理性、公平性などの理由で価格メカニズム、すなわち「見えざる手」が機能しない「市場」です。
例えば、売買が禁じられ、価格が「ゼロ」に固定された移植臓器の提供にも活用されています。海外では約1万件の腎臓移植がマッチングにより実現しました。日本では年間約1万人の研修医と全国各地の病院とのマッチングで活用されています・・・

・・・かつて世界では資本主義が社会主義に勝利し、決着がついたと考えられていました。しかし格差の広がりなどを受け、国内外で「資本主義の限界」や「社会主義の再評価」が言われるようになりました。冷戦時には存在しなかったSNSは、分断をさらに深刻なものにする恐れもあります。
イデオロギーの対立を再び繰り返すのではなく、発展的に解消する知恵が必要です。資本主義の行きすぎで機能不全に陥った「市場」があるなら、それはマーケットデザインの出番です。「見えざる手」が働かなければ、「見える手」で望ましい配分を実現し、修正すればいいのです・・・