連載「公共を創る」第98回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第98回「サービス提供、担い手は官か民か」が、発行されました。

前回に引き続き、社会における企業の役割を説明します。前回は、損害保険の役割を紹介しました。みんなでお金を出し合い、事故や出費の必要性が発生したときに金銭を給付するのが保険制度です。
そのような観点からは、地域や親族での助け合いが、最初の保険とも言えます。助ける側にも、助けてもらう側にもなります。そして、民間会社の保険や、政府の保険に発展しました。また、政府そのものが、保険金を集めない保険とも言えます。税金で、国民や住民の困りごとに応えるのです。

この議論をサービス提供主体の違いに広げると、経済学や行政学の教科書では公共サービスと民間サービスとの違いが説明されますが、官と民との区別があまり有効でないことがわかります。
1980年代から民営化、民間委託が広がりました。他方で、企業が撤退したバス路線などでは、市町村がそれを担う場面も出てきました。
すると、企業が提供するのか行政が提供するのかが重要なのではなく、住民にとっては、サービス提供が確保されること、そしてその質の確保です。そして、行政の役割は、民間が提供しない重要なサービスを提供することと、官民が提供するサービスの質の監視です。

なおこの視点からは、公務員と民間従業員との、一律の区別も有効ではありません。公務員はストを禁止されています。しかし、コロナウイルス感染拡大で分かったことは、役所の内部管理業務などは少々滞っても問題なく、それに比べ保育園、学童保育、介護施設は休まれると住民に大きな支障が出ます。