10月25日の読売新聞、社会保障欄、宮本太郎・中央大学教授の「変わる支え合い 社会参加を後押しする」から。
・・・社会保障を考える上で、現役世代を「支える側」、高齢者などを「支えられる側」と単純に分ける見方は改める必要がある。少子高齢化で「支えられる側」が膨らむ一方、「支える側」は先細りになるためだ。
「支えられる側」と決めつけられることを嫌い、地域で力を発揮したいと望む高齢者も多い。反対に、現役世代でも支える力を発揮できない「新しい生活困難層」が拡大している。
非正規雇用やフリーランスなどで就労が不安定な人や、心身の不調を抱える人、老親の介護で時間的な制約がある人などだ。正社員雇用の手厚い恩恵は受けられず、かといって、対象が絞られた福祉の制度の利用もままならない。このまま高齢期を迎えた時に、低年金などで「支えられる」ことも難しいかもしれない。いわば、雇用と福祉のはざまに落ち込んだ状態だ。
「支える側」「支えられる側」の二分法は、時代に合わなくなった。社会保障や福祉の目的を「社会参加のための後押し」に組み替えて、老若男女を問わず、「元気人口」を増やしていくことが求められる。
例えば、ひきこもりの人が自宅で仕事ができたり、高齢者が短時間出社したりと、それぞれの事情に応じた柔軟な働き方ができる環境づくりが大切だ・・・
・・・就労だけでなく、地域で育児や介護などのボランティアをしたり、子どもと高齢者が共生型のデイサービスで交流したりといった居場所づくりも大事だ。
「全世代型社会保障」を打ち出すなど、こうした改革に向けた政府の動きもあった。高齢世代のための社会保障の費用削減が先行してしまったが、現役世代への支援がより重要だろう。
地域の福祉では、多様な社会参加と就労機会を目的に「地域共生社会」という考え方も広がっている・・・