教科書を覚える教育

10月12日の日経新聞教育欄、中山迅・宮崎大学教授の「理科教育の課題 「科学とは」授業で欠落」から。

・・・経済協力開発機構(OECD)が15年、高校1年生を対象に行った学習到達度調査(PISA)で「科学とは何か」に関する認識を調べた結果も気になる。
その内容はこうだ。科学の特徴には、観察や実験から得られた証拠に基づいて真偽が決定される「実証性」▽同じ条件で何度繰り返しても同じ結果が得られる「再現性」▽定説とされる理論や法則も新しい発見があれば覆される可能性があり、「正しさ」は当面のものであるという「暫定性」――などが含まれる。
「何が真実かを確かめるよい方法は、実験することだ」という見解への賛否を尋ねる形で実証性に関する認識を調べたところ、この見解に賛成した日本の高校生は80.6%だった。
同様に「発見したことを確認するために、実験は2度以上行った方がよい」(再現性)には81.2%、「科学の本に書かれている見解が変わることがある」(暫定性)には76.9%しか賛成していない。数値だけ見ると高い割合と感じるかもしれないが、他国と比べると実は日本は最も低いグループに位置している。

例えば米国は実証性には90.0%、再現性には91.7%、暫定性には86.8%がそれぞれ賛成している。教科書に書いてあっても新事実の発見で学説が変わりうることは自然科学では当たり前であり、それこそが科学の発展の一部なのに、そのことを認めない若者が無視できない割合でいることに驚かされる。
どうも教科書の内容を絶対視しすぎているようなのである。日本人は全体的に高い科学的知識があるが、科学の本質についての理解が十分かというと、そうでもない。
原因の一つは学校の教科書に「科学とは何か」を教える内容が乏しいことにある。学習指導要領に、学習すべき内容として明記されていないため、教科書でもほとんど触れられていない・・・