デジタル庁の課題

9月23日の読売新聞解説欄は、「デジタル庁 新司令塔の課題」でした。佐藤一郎・国立情報学研究所教授の発言が、要点をまとめていて、分かりやすいです。

・・・2001年の「e―Japan戦略」以降、日本はIT戦略を数年おきに発表してきたが、いつもかけ声倒れに終わってきた。戦略の全体目標があいまいだった上、各府省庁が個別に小粒の施策を打ち出し、相乗効果を発揮できなかったためだ。失敗した原因の総括もなかった。
今回は、デジタル行政の司令塔となるデジタル庁の組織づくりから着手した点がまず評価できる。省庁にまたがるシステム関連予算をデジタル庁が一括計上する仕組みも、リーダーシップの源泉となるだろう。
ただし、システムを熟知しているのは現場の府省庁や自治体だ。強権的にシステムの一元化や標準化を進め、業務に支障が出る事態は好ましくない・・・

・・・デジタル庁は内閣直轄で、民間人材も多い。これまでにはない特異な組織だ。民間人の登用自体は問題ないが、役所と民間を行き来する人がいる以上、調達の公平性を担保する仕組みが必要だろう。弊害が起きていないかをチェックする仕組みを整えてほしい。中立的な立場でデジタル庁の成果を評価する仕掛けも講じるべきだ・・・

・・・日本のデジタル化は先進国の中でも周回遅れだ。海外は電子申請手続きなどがすでに進んでおり、デジタル化を住民が行政活動を可視化する手段とするための模索が始まっている。
世界の先を目指すには、行政の業務や組織をデジタルでどう変え、どのような社会を目指すのかの全体構想を描く必要がある・・・

1「失敗した原因の総括もなかった」とは、耳の痛い指摘です。省庁には、失敗を検証する仕組みがありません。
2 省庁は所管業務は法律に明示されているのですが、いつまでに何を達成するかの目標が示されていないことが多いです。その点、デジタル庁は、目標がはっきりしています。「制度所管」」でなく「課題所管」で運営してほしいです。「制度を所管するのか、問題を所管するのか