高校の生徒排除の構造を変える

9月7日の日経新聞教育面、磯村元信・東京都立八王子拓真高校長の「中退・不登校防ぐ高校づくり 生徒「排除」の構造変える」から。詳しくは原文をお読みください。

・・・東京都立八王子拓真高校は昼夜間3部制の定時制高校で、不登校経験などのある生徒向けの入学枠「チャレンジ枠」のある都内唯一の高校だ。前身は都立第二商業高校。「織物のまち八王子」を支える職業高校だった。
現在は進学者が5割、就職者が3割の進路多様校だが、八王子市内の高卒就職者の6割は今も本校出身者が占める。
近年は不登校や転退学(中退)の急増が大きな課題となっていた。生徒数1千人弱の本校で、2018年度に不登校生は198人、中退者は104人に達していた。
背景には多様な課題を抱える生徒たちの増加がある。具体的には発達障害、貧困、虐待、ルーツが外国にあることで日本語が不自由など。学力のハンディも当然大きい。彼らはそれぞれの困難に応じた「合理的配慮」を必要としている。
しかし、高校の指導は一律性が強い。特に単位・進級・卒業の認定や生活指導には校内規定が一律に適用される。高校は義務教育ではなく、生徒は一定の学力を備えていて当然という適格者主義、規定の柔軟な運用は不公平だという公平主義。そんな昔ながらの組織文化が根っこにある・・・

・・・中学生のほぼ全員が高校に進学し、生徒が多様化した今日、こうした文化は授業が分からない生徒、規則が合わない生徒らを排除する仕組みになってしまう。私はこれを「合理的排除」と呼ぶ。
このままでは不登校や中退に歯止めがかからない。排除する高校から配慮する高校に変わる必要がある。私はそう考え、校長に着任した19年度から改革に取り組んだ。
柱の一つは特別支援教育の考え方を導入したことだ。生徒への合理的配慮を校内規則に明示し、一律の運用を改め、個別対応を基本にした。
特に単位を取得させることを重視し、年5回の補習期間(個別指導期間)を設定。欠席の多い生徒には年度末を待たずに補習を行うようにした。
心身の病気やいじめ、希死念慮などで登校が難しい場合は欠席回数が規定を超えても、オンラインで課題を提出するなどすれば柔軟に単位を認める。保健室登校の生徒らのための学習スペースも校内に設置した。
20年度から校内で「居場所カフェ」も始めた。若者支援の専門家である都派遣のユースソーシャルワーカーが運営する。生徒が教員でも保護者でもない「第三の大人」と話せる居場所は相談の糸口ともなり、自傷など生命に関わる事故防止の観点からも極めて重要だ・・・