日経新聞「私の履歴書」、永山治・中外製薬名誉会長の8月21日の「研究開発」から。
・・・このときの精神を持ち続け、時間があれば研究開発部門のトップやリーダー格の研究者と英オックスフォード大学やケンブリッジ大学などにも行った。論文や名簿で「この人は面白そうだ」という人を探し出し、英国の知り合いを通して会いに行った。米国の大学もいくつも訪ねた。
1980年代だったと思うが、米テキサス大学に行くと、びっくりしたことに学長、医学部長、教授ら十数人が会議室で待ち構えていて「何でも聞いてください」と言う。大学にとって製薬会社は臨床試験をやってもらう「お客さん」でもある。
医学、生命科学の研究内容は一冊の本にまとめられ、誰がどんな研究をしているかすべて書いてあった。各項目にはチェック欄があり、チェック済みのものは既に他社と組んでいるという。それ以外ならどれでも共同研究をしましょうと持ちかけてきた。
このスタイルは最近でも同じだ。10年ほど前に米MDアンダーソンがんセンターを山崎達美さん(元副社長)と訪ねたときも、大きな部屋に幹部が勢ぞろいしており何でも議論しましょうと言われた。
日本はどうか。当時は有名大学でも、隣の研究室が何をしているかほとんど知らなかったのではないか。医学部の研究者に面会を申し込むと興味のあるテーマなら会ってくれるが、せいぜい一対一だ。米国の方が、産学共同研究が非常にシステマチックだ・・・