年別アーカイブ:2020年

全国市町村国際文化研修所で講義

2020年10月5日   岡本全勝

今日10月5日は、大津市にある全国市町村国際文化研修所で講義をしてきました。トップマネジメントセミナーです。私が経験した、千年に一度の大震災対応について話してきました。100人を超える方が、熱心に聞いて下さいました。

地域での災害、組織での危機などが、しばしば起きるようになりました。想定外のことも起きます。その際に、どのように対応するか。自治体幹部にとって、危機に備えることは、必須科目になりました。

補足です。講義の中で話せなかった、お詫びの仕方は、「お詫びの仕方・形も大切」「お詫びの仕方・中身が大切」です。

政策をどこで誰が決めるか

2020年10月5日   岡本全勝

9月28日の朝日新聞オピニオン欄に、「最低賃金、政治主導の限界 今なお低水準、地域間格差も深刻」が載っていました。記事の内容は、最低賃金の金額についてですが、ここでは、その決定過程について取り上げます。

・・・最賃は企業が最低でも支払わなければいけない賃金(時給)で、罰則規定もある。毎年審議され、都道府県ごとに決まる。まず、中央最低賃金審議会が都道府県をA~Dの4ランクに分けて目安を示す。これを参考にした地方最低賃金審議会の答申を受けて各労働局長が決める。いずれの審議会も、学者などの公益委員▽労働組合が選んだ労働側委員▽企業経営者などの経営側委員の三者で構成される。
中央の審議会では毎年、労使の意見の隔たりが埋まらず、最終的には公益委員の見解が答申になる。そこに政権の意向が大きく影響してきた。
新型コロナを受け、経営側から最賃の凍結を求める声が上がり、政権も理解を示した。審議では引き上げを求める労働側が押し切られた。地方では40県が1~3円の引き上げを決めたが、東京、大阪など7都道府県は引き上げを見送った。東京の審議会では採決の際に労働側が抗議の退席をした。新しい最賃は10月から順次発効する・・・

私は、このような審議会で利害対立を調整する方法はおかしいと考えています。かつて、「審議会政治の終わり?」に、次のように書いたことがあります。
・・・社会に利害対立がある場合、その両者と公益委員を入れた3者協議の場が作られます。国や自治体でもそのような3者審議会は、この賃金などの他にも例があります。かつては、公共料金、米価などが花形でニュースになりました。
政府の審議会は、シナリオを官僚が書くので、「官僚の隠れ蓑」と批判されました。ところが、この3者協議の形の審議会は、官僚の隠れ蓑ではなく、「政治家の隠れ蓑」と見る見方もあります。すなわち、社会の利害対立を調整するのは、本来は国会なり政治の仕事です。しかし、その調整を、省庁におかれた審議会に委ねるのです。そして、両者が意見を述べ、中立の立場の公益委員と官僚が、落としどころを探るのです。
政治が解決せず、丸投げされた官僚機構が編み出した「知恵のある解決の場、方法」だったのです。国会の場で大騒ぎにせず、審議会の場で静かに片を付ける。日本流の一つの解決方法でした。しかし、「官僚主導でなく政治主導で」という理念を実現するなら、このような審議会は不要になります・・・

参考「審議会の弊害1」「審議会の弊害2

浪江町で稲刈り

2020年10月4日   岡本全勝

原発被災地の浪江町沿岸部で、初めての稲刈りが行われたことを、NHKニュースが伝えています。英語のニュースもあります。浪江漁港近くの南棚塩地区です。田植えについても、このホームページで紹介しました。

避難している農家から、農業生産法人が土地を借りて稲作をしています。私も、田植えから、成長期、そして9月にと、成長を見てきました。この田んぼは、除染作業はしましたが、昨年まで荒れ地でした。そこに田植えがされ、青々と稲が育ち、黄金色の稲穂が実る姿は、感動的です。荒れ地と稲穂では、景色が大違いです。地域の人たちにも、勇気を与えてくれます。しかも大規模なので、見渡す限りこの景色が続きます。去年と今年が比較できる写真があれば、理解してもらえるのですが。

この法人を、アイリスオーヤマの子会社である舞台ファームが、支援してくれています。舞台ファームのホームページでも、稲刈りが紹介されています。他の地域や町でも、応援してもらっています。高齢化した農家は、稲作を再開しないことも多く、このような法人が入ることが有効です。ありがとうございます。実は、ここに至るまでは、いろいろと苦労もあるのですが、それはまた別の機会に書きましょう。

失敗した際の償い

2020年10月4日   岡本全勝

原子力災害伝承館が伝えることと残っていること」の続き、その2です(その1事故後の対応検証)。
もう一つ残されていることは、事故・失敗を起こした後の、責任の果たし方についてです。これについては、このホームページ「責任をとる方法」1~4で整理しました。特に「責任を取る方法2」の表「失敗した際の責任の取り方」をごらんください。

事故を起こしたことは批判されることですが、いくら努力しても起きた事実は変えることができません。しかし、その後の被害拡大を抑えることや、再発防止、そして被害者への償いなどは、関係者の努力が問われます。この点について、政府、特に経済産業省はどの程度、責任を果たし、償いをしたでしょうか。
前回述べた、事故後の対応について対応について検証がされていないこと、そしてその後の責任の果たし方が明確に示されないことの理由の一つが、その担当組織であった原子力安全・保安院が廃止されたことだと、私は考えています。「お取りつぶしのパラドックス」に書きました。

原発事故及びその後の対応について、政府は国民の信頼を大きく失いました。例えば「第2回 双葉郡住民実態調査」(2018年1月、福島大学うつくしまふくしま未来支援センター)は、大震災発生当時、双葉地方7町村に居住していた全世帯を対象にした調査です。そこでは、いくつかの組織について「どのくらい信頼しているか」を聞いています。
それによると、「信頼していない」+「あまり信頼していない」の回答が多かったものは、東京電力(76%)に次いで、政府(69%)、学者・研究者(50%)の順になっています(P22)。自治体やマスコミなどに比べ、格段に低いのです。
官僚は、改めて自覚すべきです。この落ちた政府への信頼を、どのように回復するか。それは、責任の取り方を、被災者や国民が評価してくれるかどうかによると思います。

さて、そのような視点からは、県が伝承館をつくり、東電が廃炉資料館をつくりました。では、国はどのように、この失敗を後世に伝えていくのでしょうか。
その3に続く

連載「公共を創る」第58回

2020年10月3日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第58回「日本は大転換期―学校外の子育て機能の低下」が、発行されました。
高く評価された日本の教育制度が、成熟社会になって機能不全を起こしています。近代化手法の問題の一つは、理想をだけを教えることです。立派な国民を育てるために、理想的な生き方を教えます。これはよいことなのですが、理想から漏れ落ちる子どももいます。それへの対応、つまずいた際の安全網の教育が不十分なのです。かつては、それらは家庭や地域に任されていました。

成熟社会の教育問題の3つめは、学校外での教育機能の低下です。子どもの貧困、児童虐待、不登校、いじめ、非行など、これらの対応を教員に求めるのは無理があります。かつて、家族、地域社会が守り教えてくれたことが、できなくなったのです。

ここから見えることは、子どもを教育の対象としてみるのではなく、子育てとしてみることの必要性です。一人では生きていけない子どもを養育することと、一人前に育てることです。学校教育は、そのごく一部でしかありません。