償いの主体

「原子力災害伝承館が伝えることと残っていること」その2「失敗した際の償い」の続き3です。
9月30日に、原発事故を巡り、福島県内の避難者らが国と東電に損害賠償などを求めた訴訟の判決が仙台高裁で出ました。判決では、国と東電の責任を認め賠償を命じました。この判決の当否については、ここでは触れません。

ここで取り上げるのは、その判決への政府の対応です。報道によると、官房長官が記者会見で答え、原子力規制委員会委員長も答えています。もっとも、原子力規制委員会は、委員長が答えているように、この事故を受けてつくられた組織で、将来の事故を防ぐための組織です。東電福島第一原発事故について、責任を問われる組織ではありません。
「受け止めですけれども、改めて、原子力規制委員会というのは、東京電力、福島第一原子力発電所の事故に対する反省やほとんど怒りと言っていいようなものに基づいて、設置された組織ですので、今回も、今日も改めて引き締めていきたいというのは、今後とも我々というのは、原子力発電所をはじめとする原子力施設の規制を、厳正な規制を進めていくというのは、第一の所感につきます。」

日本の国家行政組織は、分担管理という原則があります。ある案件はどこかの府省に割り当てられます。どこの府省にも割り当てられず、内閣・内閣官房が所管する事務もありますが。
経済産業省原子力安全・保安院が担っていた事務で、他省に引き継がれなかった事務は、経産省に残っていると考えられます。ここで取り上げている「償い」は、まさにそれです。国が被告の裁判の判決が出た際に、国としての考えを述べるのは、経産省でしょう。
しかし、経産省は何も表明していないようです。このあと、国会で質問が出たら、答えるのは経産大臣だと思うのですが。