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連載「公共を創る」第39回

2020年4月5日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第39回「日本は大転換期―行政が前提とした社会の変化」が、発行されました。今回から、第3章「転換期にある社会」に入ります。
第1章では、大震災の復興で体験した、これまでの復旧行政では住民や地域の要望に応えることができなかったことを解説しました。第2章では、住民の要望に応えるためには、世間ではどのような要素が必要なのかを分析しました。そこでは、これまでの行政の守備範囲では十分でないことを指摘しました。
第3章では、これからの行政の在り方を考えるために、行政が前提としていた日本社会の変化を考えます。かつて、世界から高く評価された日本の経済成長と官僚機構は、バブル崩壊後すっかり評価を落としました。その原因を考えます。

その第1回は、1日本は大転換期(1)成長から成熟へ、です。ここでは、第2次世界大戦後の日本を、昭和後期と平成時代の2期に分けて、それぞれの時期の変化を見ます。昭和後期は経済成長の時代であり、平成時代は停滞の時代です。それによって、私たちの身の回りが大きく変わり、意識も変わりました。個人の暮らし、家族の形、世間が変わったのです。

これらの変化は、新聞や年表に載るような出来事の歴史ではありません。数十年かかって変わるものであり、日々の暮らしではまた毎日のニュースでは、気づかないことです。もちろん、どの時代にも社会は変化するのですが、この75年間、戦後半世紀の変化は、まことに驚異的でした。
私はそれを、「長い弥生時代の終わり」と表現しています。日本列島に住んだご先祖様の暮らしを大きく分けると、狩猟時代(縄文時代)、稲作時代(弥生時代)、そして産業化時代と3つに分けることができます。すると、稲作を中心とした時代は、戦後まで続いていたのです。それまで約半数の人が、稲作に従事していました。その意味で、「長い弥生時代」は、戦後まで続いていたのです。
飛鳥時代、平安時代、江戸時代と歴史の教科書で習いますが、政治権力でなく日本人のなりわいから見ると、そのように区分できます。この変化に、私たちの暮らし方や意識はついて行っているのか。それを、考えます。

昨年4月末に連載を開始してから、1年が経ちました。早いものですね。「まあ、1年くらい続くかな」と目算を立てて始めたのですが、半分を過ぎたくらいでしょうか。
行政文書や論文のような硬い文章でなく、読み物として平易にまた私の体験を入れて書いているので、長くなっていることもあります。その点を評価してくださっている読者もいます。
今回の冒頭に、これまでの目次をつけておきました。このホームページをごらんの方は、こちらに載っているので不要ですが。ホームページのホームページの目次も長くなったので、2ページに分けました。

北村亘先生「2019年官僚意識調査基礎集計」

2020年4月4日   岡本全勝

北村 亘,・阪大教授たちが行っておられる、官僚意識調査の基礎集計がまとまりました。「2019年官僚意識調査基礎集計」『阪大法学 69(6) 』。インターネットで読むことができます。
今後、この数値を基に、分析が加えられます。既に北村先生は、NHKの取材に対し、活用しておられます「霞ヶ関のリアル 心身病む官僚たち

6ページに、結果が出ています。基礎的な問をいくつか紹介します。
1ここ2,3年で急激に業務料が増えているはかという問には、肯定する割合が74%です。
2業務量の増大に組織として対応できているかという問には、否定する割合が82%です。
6業務の高度化・複雑化に組織として対応できているかという問には、否定する割合が84%です。
客観的事実がどうかは別として、官僚たちは近年の変化を深刻に受け止めています。

この背景には、日本の公務員の人数の少なさがあります。3ページに載っている、世界各国の公務員の「業務量」比較をご覧ください。かつては、このことも日本の官僚の評価を高めたのですが。そして、行政が対応すべき社会の課題が変化したこと、あわせて政治主導への切り替えにまだ戸惑っていることが上げられます。

この調査は、このホームページでも紹介し、参加をお願いしました。参加くださった官僚たちに、お礼を言います。
そこでも書きましたが、各国では政府が行っています。次回は、内閣人事局が実施することを期待しています。もっとも、雇用主の調査と、外部の研究者の調査は、視点が異なるところもあります。その調整は必要です。この項続く

次々と起こる新しい事態

2020年4月4日   岡本全勝

公務員の仕事は「前例通り」と言われることがあります。しかし、次々と、これまでにないことが起きています。9年前の東日本大震災、そして今回のコロナウィルス流行です。ここに、日本の政治と官僚機構の力量が問われます。参考「3月19日に思う、災害対策の要点

もっとも、このような災害だけでなく、技術と社会の変化によって、対処すべき新しい事態も起きています。例えば、ガーファ(GAFA)など巨大IT企業による情報産業の支配、それらに対する個人情報の保護、他方でスマホやゲーム機による中毒もあります。
ゆっくりと進む社会の課題には、引きこもり、虐待、子どもの貧困、孤立などがあります。災害や事件事故は、ニュースとして大きく取り上げられますが、このような緩慢な変化は、見落とされがちです。

明治以来発展してきた日本の行政機構と行政手法は、昭和後期にすばらしい成果を発揮しました。しかし、その後に起きている新しい課題に、まだ十分対応できていません。それを、連載「公共を創る」で論じています。

経済発展、モノとサービスの充実に適した行政機構は、提供者側、事業者側に沿った組織と仕組みになっています。ところが、大震災でもコロナウィルスでも、被災者や困った人たちに応える必要があります。しかし、行政機構と発想はそうなっていないのです。
マスクの増産は、これまでの行政機構でできます。課題は、誰がそれを求めているか、その人にどのようにして届けるか。生活資金に困っている人は誰か、どのようにその人たちを把握し、救うかです。そのような案件を所管する省庁がない、そのような思考をする省庁がないのです。

桜並木を育てた人たち

2020年4月3日   岡本全勝

東北新幹線の車窓から、いくつも桜と桜並木が見えます。それを見て、先人たちの努力を思います。

里山の桜は、自然と育ったものでしょう。屋敷や畑の隅に咲く桜は、その土地の所有者が植えたものでしょう。
では、桜並木はどうか。桜並木は、道路沿いや河川沿いにあります。地元の人が協力して植えたのでしょうね。そして世話をして、ここまで育ったのだと思います。

そのような並木が、今後衰えたら、どのようにして維持されるのでしょうか。篤志家や町内会がしっかりしていないと、枯れていくことになります。市町村役場の責任にせず、住民や企業の協働で続けることができるとよいのですが。

改革のやりっ放し

2020年4月3日   岡本全勝

3月30日の読売新聞、松岡亮二・早稲田大准教授の[1000字でわかる教育格差]「政策提案「改革のやりっ放し」脱却を」から。

・・・日本の教育改革は「現状把握」を十分せずに根拠薄弱な目標を掲げ、予算不足のまま強行することで学校現場を疲弊させ、効果の測定をしない、という迷走を繰り返してきた。
教育は自身の経験と見聞で尤もっともらしい議論をすることができる上、成果はすぐには表面化しない・・・医者が診察と検査をせずに病名を断定し、何となく良さそうな投薬・手術を行い、経過観察をしないのと同じである。

この教育「改革のやりっ放し」を止めるために、具体的にできることは多い。たとえば、
(1)全国学力調査の改善(抽出にして保護者と教員も調査)、
(2)同一の子供を長期的に追跡する大規模パネル調査の実施、
(3)貧困率や教員非正規率など学校の特性を示すデータの作成・更新、
(4)審議会など政策議論時に全国調査による現状把握を義務化、
(5)制度変更前にデータ取得計画作成、などである。
これらの「現状把握」に基づき、一部の地域でランダム化比較試験などによる実践・政策の効果検証を行い、どんな「生まれ」の子供に「何」が効くのか研究知見を蓄積した上で、効果のある対策を広域で実施することができれば合理的かつ効率的だ・・・