北村 亘教授、日本の行政はスリムすぎる

中央公論』10月号は、特集「コロナで見えた公務員「少国」ニッポン」です。よい視点ですね。
そこに、北村 亘・大阪大学教授「日本の行政はスリムすぎる コロナ禍が炙り出す宿痾、意識調査に見る府省間格差」が載っています。10ページの小論ですが、重要な視点からの、深い内容が書かれています。お勧めです。多くの公務員が、納得すると思います。

取り上げられている論点を、いくつか紹介します。
・先進各国に比べ日本は公務員数が少ないことは、既に指摘されていますが。これが災害対応やパンデミック、さらには官邸から指示される新規施策の設計実施に職員が足らなくなっていること。危機時だけでなく、平時においても、職員数不足が露呈しました。
私も、常々問題に思っています。職員数不足は、民間委託で切り抜けています。しかし、新しいことを考える時間がないのです。例えば、公共事業などを民間委託するのは納得できますが、近年では企画立案や国民からの申請交付といった業務まで、設計と実施が企業に委託されています。官庁と自治体に人的余力がなく、他方でノウハウもなくなっています。
・省庁別に予算と定員、幹部職員比率が、二次元のグラフで図示されています。これは面白いです。
・予算額と職員数を比較して、官庁を3つに分類しています。
これまで私たちは、制度官庁・実施官庁と区別していましたが、ここでは、政策助言官庁・移転官庁・政策実施官庁の3区分です。これは納得です。制度官庁・実施官庁の区分は、発展途上社会・昭和までの官僚主導国家での区分でしょう。
官庁がこれからどのように生き延びていくか。この「性格区分」が使えそうです。
・2019年に先生たちが実施した「官僚意識調査」の結果が利用されています。この分析も興味深く、納得します。官僚の皆さんには、ぜひ読んでもらいたいです。

官庁や自治体の構造的問題を、コロナ危機対応という事案から指摘する。久しぶりに、実のある官僚論を読みました。
先生が、この論点をさらに掘り下げられて、論文や書物にされることを期待しています。
ところで、私の連載「公共を創る」も紹介されています。ありがとうございます。