月刊『中央公論』2020年8月号は、特集「コロナで見えた知事の虚と実」です。砂原庸介・神戸大学教授が、2人の知事に取材をし、取材後記として「国の政治主導、地方の政治主導」を書いておられます。詳しくは原文を読んでいただくとして。
・・・全国知事会での対策を主導した二人の知事から異口同音に語られたのは、今回の新型コロナウイルス感染症対策の中で、国が地方からの要求に対して非常に応答性が高かったということである。これまで災害のような緊急時において、しばしば国は地方から、反応が遅いとか不十分であるとか、どちらかといえばネガティブな評価をされるのが通例だった。それに対して今回は、知事から西村康稔新型コロナ対策担当大臣、加藤勝信厚生労働大臣という二人の担当大臣へと行われた要請が、迅速に、時には知事たちの期待上回るかたちで実現したことについて、知事たちも積極的な評価をしているように思われる。
このような変化は、第二次安倍政権において時には批判的に論評される「政治主導」のひとつのあらわれともいえる。従来見慣れた風景は、知事が地方官僚を引き連れて中央省庁に陳情し、「縦割り」省庁間の調整で当初の要請とはかけ離れた決定が行われるというものだった。しかし感染の懸念も後押しするかたちで知事たちは政治に対して直接要求を届け、それを受け取った大臣は何らかの反応を求められることになる。各省間の調整よりも、内閣官房を中心としたトップダウンの調整が行われるようになったことが、応答性の向上をもたらした側面があると考えられる・・・
なお、砂原教授による同号の巻頭言「情報が歴史になるには」も、鋭い指摘です。合わせてお読みください。