1月18日の朝日新聞オピニオン欄。ケンブリッジ大学名誉教授、デイビッド・レイノルズさんのインタビュー「英国、解体の足音」から
・・・英国の歴史を500年単位で見ると、偉大な大国だった18、19世紀は例外です。小さな島国で、資源も限られ、衰退しているのがむしろ定番でした。海洋が重視される時代になり、海軍と商業船団の発達のおかげで世界中の資源にアクセスし、奴隷の力も借り、英国は大英帝国に成長したのです。蓄えた富で産業革命を起こし、19世紀半ばに産業経済大国となりました。「英国は偉大だ」という意識は、こうした経緯と結びついています。
ただ、この国のサイズでその力をずっと維持できるわけではありません。その後の英国の展開は、没落というより、定位置に戻っただけ。にもかかわらず、「世界での地位を失った」かのような感情が残りました。それを利用して「英国を再び偉大な国に」との選挙スローガンを打ち出したのがサッチャー首相です。彼女が率いる保守党にとって、偉大さの喪失は見過ごせなかったのです・・・