移民の日本社会への統合

是川夕・国立社会保障人口問題研究所 人口動向研究部第三室長の「移民受け入れと社会的統合のリアリティ――現代日本における移民の階層的地位と社会学的課題」(2019年12月2日、シノドス)が勉強になりました。是川さんの著書(2019年、勁草書房)の解説です。

日本が既に移民受け入れ国になっていることを指摘した上で、日本に来た移民たちがどのように日本社会に統合しているかを、数値を基に明らかにします。
これまでのマスコミ報道では、フィリピンパブで働く女性、農村での外国人花嫁、技能実習生の過酷な労働、コンビニや飲食店でのアルバイトなど、社会の底辺で働く外国人労働者という印象が強いです。そして、学校になじめない子供たちも。

是川さんは、そのような定番の見方を覆します。労働、女性、世代の視点から、私たちの想像とは違った、日本社会への統合が行われていることを明らかにします。
詳しくは原文、または原著を読んでいただくとして。著者の視点は、移民の日本社会での状況とともに、それを生み出す「日本社会の側」を明らかにします。
コンビニでのアルバイトや農村や工場での肉体労働だけでない、管理職、専門職、ブルーワーカーなどが、どのように会社で出世していくか。そこに、技能によって評価される専門職と、途中採用では出世できない管理職や正規職が見出されます。それは、日本型雇用慣行です。
女性にあっては、日本女性の日本社会における位置づけが、移民女性の日本社会への受け入れを規定しています。そこに、日本社会での女性の地位が浮き彫りになります。

原著を読めば良いのですが、たぶん届かないと思うので、この解説が良かったです。砂原庸介教授のブログで知りました。