朝日新聞社の言論サイト「論座」。山下一仁・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の「あなたの知らない農村~養豚農家は所得2千万円!現代日本の農村に「おしん」はいない」(2019年12月27日)が、分かりやすかったです。特に、図表がよいです。
まず、作物別の農家所得比較です。
水田は500万円ほど、しかもそのうち農業所得は100万円もありません。年金収入が半分を占めています。
野菜で約600万円、牛肉で800万円、ブロイラーになると1,200万円、酪農は1,700万円、養豚では2,000万円になります。
米作りの多くは、サラリーマンの兼業か、高齢者です。他方で、大規模営農をしている人もいます。畜産関係は企業経営でしょう。
ここでの問題は、家業(家内労働)でなく、企業(事業)にならないと、所得は上がらないということです。これは、商工業と共通することです。農「家」問題と農「業」問題は、別です。
なぜ、稲作は農業にならず農家で続いたか。それも、図表で示されています。
稲作は、手間がかからないのです。さらに、兼業でもできるのです。
10アール(1反)当たりの年間労働時間は、1951年の200時間から、現在では30時間に満ちません。8時間労働だと4日かかりません。
1ヘクタール(10反)だと、251日から29日に激減しています。大規模営農だと、もっと効率的です。
圃場整備、水利、農薬、田植機と稲刈り機の発達で、こんなに楽になったのです。休日に働くだけで、できます。野菜や畜産は、そうはいきません。毎日作業があります。
農家も減りました。戦後、日本の就業者の5割は1次産業でした。現在では、4%です。
農村での状況が、図になっています。1970年に農家が7割以上の集落は6割ありました。農家が5割以上を占める集落は、8割近くありました。農業集落は、ほとんどが農家でした。
現在では、農家が7割以上を占めている集落は7%、農家が5割以上の集落で見ても23%です。
日本の農村、農家、農業の姿は、この半世紀ですっかり変わりました。