行政化する日本政治、その2

前田健太郎・東大法学部准教授の「行政化する日本政治」の続きです。
先生は、1990年代に佐々木毅先生が、野口さんと同様に、政治思想の研究者が行政学の研究動向を批判したことを取り上げます。政党優位論への反論です。

・・・佐々木の批判の要点は、こうした政党優位論が、政治家の役割に関する不適切な理解に立っているということであった。民主政治における政治家の役割とは、ただ単に個別の政策分野で官僚に対して影響力を行使することではない。むしろ、政治家の役割とは、政党を組織することを通じて、様々な政策分野を横断する政策パッケージを提示し、その中身を他の政党との論争を通じて鍛え上げることである。族議員のように、選挙区単位、業界単位の特殊利益を代弁し、その利益を当該分野の所管官庁の予算獲得を支援することを通じて実現しようとする政治家は、本来果たすべき役割を果たしていない。政党優位論が見出したのは、「政治家の官僚化」なのである・・・

・・・1990年代以降に展開した政治主導のための諸改革の行き過ぎが忖度の問題を生み出したのではない。むしろ問題は、政治主導が、政治家同士の論争を通じた政策決定ではなく、首相の権限強化を通じたリーダーシップの行使と理解されたことにある。その帰結として、与野党間はもちろん、与党や官僚制内部においても政策を巡る論争が低調になったのである・・・

鋭い指摘です。原文をお読みください。
私も、官僚の評価の低下の原因の一つは、政策を議論しないことにあると主張しています。政策を決定するのは、内閣です。そして、決められたことを実行するのは、官僚の役割です。しかし、政治家に対し、必要な政策、選択肢としての政策を提示することも、官僚の重要な役割です。
毎日新聞「論点 国家公務員の不祥事」」「毎日新聞「論点 国家公務員の不祥事」その2