モートン・マイヤーズ著『セレンディピティと近代医学ー独創、偶然、発見の100年』(2010年、中央公論新社。中公文庫に再録)を読み終えました。
セレンディピティとは、幸運な、意外な発見という意味です。特に、何かを探しているときに、探しているものとは別のものを見つけ出すことです。
この本は、近代医学が、いかに偶然による発見によって進歩したかを、実例を挙げて説明した本です。
青カビからペニシリンを見つけたことは、有名ですね。ペニシリン発見の偶然も、詳しく読むと、かなり幸運な偶然です。ところがこの本を読むと、出てくるわ出てくるわ、次々と同じような例があるのです。
科学者が、それまでの知見の上に推理を重ね、実験を続けますが、うまく行きません。その分野の大家でない新人が、偶然、びっくりするような発見をします。しかし、なかなか学界では認めてもらえないのです。もちろん、素人が偶然に遭遇しても、発見にはつながらないのですが。
読んでいくうちに、あまりにそのような例が多いので、食傷気味になるほどです。近代医学の発展は、直線的でなく、偶然の積み重ねだとわかります。