3月29日の朝日新聞オピニオン欄、三谷太一郎・東京大学名誉教授の「平成から新時代へ 冷戦後デモクラシー」から。このインタビューには様々な重要な論点が含まれているのですが、ここでは2つだけ紹介します。
・・・これは日本だけの変化ではありません。私は、日本にも「首相統治」の時代が来た、と考えています。まずそれが出現したのは、第2次世界大戦後の英国です。大戦の影響もあって、英国では立法と行政が非常に強く結びついた首相統治が生まれた。政治学の教科書でいうような権力分立制ではなく、真の権力はダウニング街10番地(首相官邸)にある。大戦中の英国の首相はカリスマ的指導者のチャーチルですが、そのあと、労働党のアトリーになっても首相統治は続いた。指導者のカリスマや個性の問題ではないのです・・・
・・・小選挙区比例代表並立制という現行制度が、首相統治を支えているのは間違いない。党内権力が少数の幹部に集中し、選挙候補者の選任や政党助成金の配分に、首相が大きな力を持った。加えて、内閣人事局による行政への支配が強まり、立法と行政の権力分立が縮小し、癒着問題が生まれた・・・
私は、その原因について、少々違った見方をしています。「首相統治」は、それを要求する、現代国家における世界共通の背景があります。他方で、それを容認する仕組みも必要です。そしてなにより、首相の運営方法によります。これについては、別の機会に書きましょう。
「現在もまた、議会制民主主義の危機がいわれています」との問に。
・・・重要なのは、個別の政党の影響力を拡大する以前に、「個々の政党の利益を超えた価値」を維持するメカニズムを構築することです。議会自体の持つ「公共性」を考えるべきでしょう。社会の中で注目されていない意見を、党派を超えて取りあげる。議会が選挙民を啓蒙する教育的機能も大事です。党派と関係なく議会が持っている「公共性」というものがないと、実は政権交代も円滑には進まないのです・・・