小田中直樹著『フランス現代史』(2018年、岩波新書)が勉強になります。
1940年代から現在までを、10年ごとに区切って、それぞれの時代の特徴を明らかにしています。そして、全体を通して、社会・国民の間の分裂をどのように統合してきたかという視点で、分析しています。
著者が最初に述べているように、フランスはかつてはお手本とする先進国でしたが、経済面などで「追いついた」日本にとって、以前のようなお手本ではなくなりました。
しかし、欧州統合、移民問題、ポピュリズムなど、内外の変化から生まれる社会の分断に取り組む姿は、いずれ日本のお手本になるでしょう。
社会の分裂と統合。政治の大きな役割です。日本では、それが大きな問題になっていません。たぶん、60年安保闘争が、社会の分裂として政治問題になった最後でしょう。もちろん、都会対田舎、高齢者対若者、正規対非正規、貧富の格差など、社会の亀裂は生まれているのですが。
社会の分裂を政治が統合した例として、イギリスの経験を紹介したことがあります。「社会の分断、それを解決する政治」。アメリカもまた、そのことに悩んでいます。
この本は、現代史と銘打っていますが、経済社会の変化が生む課題とそれに取り組む政治が内容です。かつての歴史書は、政治史でしたが、この本のように社会の変化を視野に入れた政治史まで広がっています。
もちろん、生活や文化などを含めた、もっと広い社会史や文化史も期待したいところです。
新書という分量でまとめるのは、大変な力量が必要です。本書は、それに成功していると思います。お勧めです。日本についても、このような本が書かれると良いですね。