11月22日の朝日新聞オピニオン欄「人を導く力とは」から。
筒香嘉智さん(プロ野球横浜ベイスターズ選手)
・・・今年の夏、少年野球で暴力を振るう指導者の動画を見ました。あり得ません。罰はまったくいらない。他のスポーツや会社でも、怒鳴る、殴るという指導があると聞きますが、そのような指導者は、相手に聞いてもらえる言葉を選べていないわけで、言うだけで足りないから殴ったり怒鳴ったりしてしまうんですよね。
指導する際は、じっくり見守り、迷いがあるときなどに手を差し伸べる、というのが理想的です。答えをすぐに教えたくなる気持ちもわかりますが、それは子どものためにならない・・・
・・・コーチングというのは、本来は導くという意味です。しかし、日本ではティーチングをしていることが多い。怒鳴りつけるコーチは米国でもドミニカでも見ませんでした。会社でも、部下が仕事でミスをしたというだけで怒り、自己満足しているのは厳しさじゃないと思います。愛がないように感じます。共にする時間が長い上司として、部下が日ごろどう考え、どんな努力をしてきたのかをすべてわかった上での言葉ならいいと思いますね・・・
川人博さん(弁護士)
・・・元ラグビー日本代表の故・平尾誠二さんと、ノーベル賞を受賞した山中伸弥さんの物語を書いた「友情」という本に、「人を叱る時の四つの心得」が記されています。(1)プレーは叱っても人格は責めない(2)あとで必ずフォローする(3)他人と比較しない(4)長時間叱らない、とありました。
私が担当する東京大学のゼミで、(お好み焼き店チェーンの)千房の創業者である中井政嗣さんに話をしてもらったことがあります。元受刑者を積極的に採用し、上司が部下に接する際に大事なのは、「ねぎらい」と「励まし」だと指摘されていました。これこそリーダーシップだと思います。
この逆がパワハラで、相手のためではなく自分のストレス発散のために叱っています。誰でも加害者になる可能性があります。個人的資質も関係ありますが、環境や置かれた条件にも左右されます。社長から無理難題を課せられた部長や課長が、その部下に八つ当たりをするようになります。
長時間労働で肉体的にも精神的にも疲れると、他者への配慮を欠くことにつながります。抑圧は下へ下へと移っていき、最終的に家庭内での虐待などにもつながっていると私は考えています・・・
この項続く。