あこがれのフランス

フランス旅行には、いつものように、固い本と軟らかい本を持って行きました。柔らかい方は、鹿島茂著『クロワッサンとベレー帽 ふらんすモノ語り』(2007年、中公文庫)を、積ん読の山から見つけて。

フランスで(フランスに滞在中は余裕はないので、正確には飛行機中で)、フランスに関係するエッセイを読むのは、ぜいたくなことですね。日本で読むより、「なるほど」と思うことが多いです。この本の原本は、1999年。さらに、収録されている個別のエッセイは、その前に書かれたものですから、結構時間が経っています。
いつもながら、先生の著作は、切れ味良く読みやすいです。

その中で、フランスとフランス語、フランス語学科が、かつてのようなあこがれでなくなったことを、嘆いておられます。
そうですね。私の時代は「ふらんすへ行きたしと思へども ふらんすはあまりに遠し・・・」(萩原朔太郎)の時代ではありませんが。かつては、海外旅行は簡単でなく、そしてフランスはその中でもあこがれでした。「おふらんす」と、漫画おそ松くんの中で、フランス帰りのおじさんイヤミは表現していました。
デパートでも、イギリス展、フランス展が毎年開かれていました。いつの頃からか、このようなフェアがなくなりました。売り場を覗いても、欲しいなあと強くひかれるモノもなくなりました。

フランスやイギリスに行っても、これは買いたいと思う品も、お土産に買って帰りたいという品も、なくなりました。もちろん、とんでもないお金を出せば買える「すばらしいモノ」はあるのですが。これは、私には手が出ないので。
日本が豊かになり、「舶来品」「舶来上等」が消えました。舶来といっても、若い人には通じませんかね。また、海外旅行が珍しくなくなり、彼我の差が縮まりました。おいしフランス料理もワインも、日本で食べることができます。
しかし、行ってみると、見るところは多いですね。