6月22日の朝日新聞オピニオン「いいね!スポーツ中継」、水越伸・東大大学院情報学環教授の「昭和の型から抜け出して」から。
・・・一般の人がSNSで発信できるようになり、スポーツの見せ方は一つではないという事実と、その面白さに気づいてしまったんです。10代のネットの利用時間は、テレビの視聴時間を上回っています。受け手のニーズの変化に合わせ、送り手も中身を工夫する必要があります。
ところがそんな時代に、日本のテレビは古い型から抜け出せていません。昭和時代に隆盛だったプロ野球や大相撲、プロレスを基軸とした従来の型です。王や長嶋、力道山といったスーパースターだけに焦点を当て、勝利の物語にしか関心を示さない。サッカーW杯でも特に民放は、日本の本田や香川らスター選手のことばかりやっています。
型を持つのが悪いわけではありません。大学の論文を書くにも講義を進めるにも一定の型はあります。ただ、例えば武道でいえば、ある流派の中でその型だけを神格化していたら異種格闘技では負けますよ。「もっと違う型もありうるのでは」と意識することが大事だと思います。
例えば成功した選手の物語もいいけど、うまくいかずに無念に終わった選手もしっかりとり上げて欲しい。「どうしてうまく行かなかったのか」に焦点を当てることは、その競技に取り組む子どもたちのためにもなります。
また、日本人選手だけをとり上げるのもやめて欲しい。テレビのプロが思う以上に、型にはまっていない視聴者は多い。もっと多文化的であるべきだと思います・・・