立教大学が岩手大学と共同で、陸前高田市に交流拠点を開設しました。「陸前高田グローバルキャンパス」です。大学の学生や研究者、企業や市民が利用でき、研究の拠点にもなります。「立教大学のホームページ」、「岩手日報」の記事。
廃校になった中学校を利用して、教室を改修し、講義室や研究室を造りました。教職員が常駐していませんが、地域の、また外から来る研究者の拠点になると思います。5月は既に土曜日曜に、よく使われるようです。
このような復興支援もあるのですね。ありがとうございます。
年別アーカイブ:2017年
場の提供者の責任
4月27日の朝日新聞オピニオン欄、津田大介さんの「「場」の提供者、問われる倫理」から。
・・・4月初旬、生後6カ月の男児が蜂蜜入り離乳食を摂取したことで「乳児ボツリヌス症」を発症、日本初の死亡事例となった件で日本最大のレシピサイト「クックパッド」に非難の声が集まった。国や自治体が母子手帳や乳児健診で1歳以下の乳児に蜂蜜を与えてはいけないと注意喚起していたにもかかわらず、同サイト上に蜂蜜を使った離乳食レシピが約140件も掲載されていたからだ。
クックパッドのIR資料によると、月次利用者数は6327万人。実に日本人の2人に1人が日常的に利用していることになる。それだけ影響力の大きなサイトに、一部とはいえ人体に危険を与える情報が掲載されていたわけだが、同社に法的責任を問う声は聞こえてこない。彼らは一般市民がレシピ情報を投稿する「場」を提供している存在――「プラットフォーム事業者」に過ぎないからだ。同社の利用規約には「本サービスの利用により発生した利用者の損害については、一切の賠償責任を負いません」と記載されている。レシピの利用はあくまで閲覧者の自己責任で、という立場だ。
だが、蜂蜜を使った離乳食レシピがもし書籍、あるいは新聞に掲載されていたら大問題になったはずだ。通常、大手出版・新聞社には情報が正しいか確認する「校閲」という部署がある。レシピのように専門性の高い分野では、管理栄養士などの専門家が監修を行うのも通例だ。普段我々が意識することは少ないが、雑誌や新聞の定価にはそうした「情報の検証コスト」も含まれている・・・
情報を商品ととらえるなら、個別の情報はそれを書いて発信した人が、「売り主」としての責任をもつことになります。その情報が正しいのか間違いなのか、賛成か反対かも、買い手である読者が、判断することになります。では、それを並べる場所を提供した人は、どこまでその「商品」に責任を持つのか。
他方で、場の提供者が過度な「情報統制」をしたら、自由な発言が制限されます。難しい問題です。技術の進歩と多くの人が利用できるようになることで、新しい問題が出てきます。原文をお読みください。
大型連休
今日は、5月5日。あと2日で、大型連休も終わりですね。皆さんは、どのように過ごしておられますか。各地で、天候にも恵まれたようです。
私は、5月1日と2日も休暇を取って、前半は関西へ。奈良の実家で両親に顔を見せ、母校の同窓会で講演。京都では、大学の先生と京の町家で懇談会、京都迎賓館も見ました。そして、兵庫の義父の墓参り。
キョーコさんのお供をして、ぎっしり詰め込んだ旅行でした。携帯パソコンを持って行っていたので、このホームページの加筆もできました。
後半は、原稿書きと大学の準備。講演もいくつか引き受けているのでその準備と、仕事に励んでいます。仕方ないですね、ホイホイ引き受けて、休日しか準備の時間がとれないのですから。
合間に、美術館巡りもしました。ブリューゲルの「バベルの塔」(東京都美術館)は、良くここまで細かく書き込んだものだと、感心します。拡大した複製を見ないと、細部がわかりません。「二条城行幸図屏風」(泉屋博古館分館)も、すごいですね。登場人物は4千人を超えるとか。
「雪村」(東京芸大美術館)も、良かったです。都でなく関東や福島で活躍した画家なのですね。まだの方は、お勧めです。
団体への加入率の変化
昨日紹介した、中北浩爾著『自民党』に、興味深い表が載っています。「有権者の団体加入率の推移」p196です。「明るい選挙推進協会」調査から、先生が作成されたものです。一部を抜粋します。
数字は左から、1980年、90年、2000年、2009年、2014年で、%です。
自治会 65、68、48、35、25
農業団体 10、11、5、3、4
労働組合 12、8、5、6、6
経済団体 6、7、4、3、2
非加入 18、18、32、40、43
この40年の間に、日本社会が大きく変化したことが、読み取れます。特に、自治会加入者の減少と、どこにも属していない人の増加が激しいです。
このような「緩慢な変化」は、ニュースにはなりません。私たちが気づかないうちに、静かに進行している変化です。しかし、社会や政治を規定する、あるいは社会問題を生む大きな要素です。
中北浩爾著「自民党」
中北浩爾著『自民党』(2017年、中公新書)を紹介します。選挙制度改革以降の自民党を、多角的にとらえた好著です。新書というコンパクトな中に、必要なポイントを網羅した、かつそれぞれの分析が適確な本です。自民党を語る際の標準的教科書になると思います。
章立て(分析の視角)が良いですね。派閥、総裁選挙とポスト配分(総裁権力の増大)、政策決定プロセス(事前審査制と官邸主導)、国政選挙、友好団体(減少する票と金)地方組織と個人後援会。
制度と運用の実態の双方から、そしてその関係について適確に分析しています。これだけの内容(特に運用の実態となぜそれが成り立っているか)を書くには、かなりの人に取材をされた結果だと思います。国会議員、党職員、新聞記者・・・。またそれを咀嚼し、全体の中で位置づける能力が必要です。
新書という大きさからの制約ですが、これだけの内容の本なら、もう少し大きな版でも良かったと思います。
その際には、今の国政(自民党一強)を成り立たせている要因=野党である民主党との関係、あるいは民主党との政権担当能力との比較を書いて欲しいです。
また、事前審査制なども良く書かれているのですが、官僚との関係や、国会対策委員なども深掘りして欲しいです。
今後の課題ですが、総裁と国会議員との関係、官邸と党との関係、官邸と霞が関との関係は、制度より運営(リーダーである総理総裁の意思とフォロワーである国会議員の意識)による面が多いので(第1次安倍政権と第2次安倍政権とでは選挙制度や内閣制度は変わっていません)、それらの分析も必要となってくるでしょう。
いずれにしても、自民党、そして現在の日本の政治を語る際に必須の教科書です。「砂原庸介先生の書評」も、お読みください。