中北浩爾著「自民党」

中北浩爾著『自民党』(2017年、中公新書)を紹介します。選挙制度改革以降の自民党を、多角的にとらえた好著です。新書というコンパクトな中に、必要なポイントを網羅した、かつそれぞれの分析が適確な本です。自民党を語る際の標準的教科書になると思います。
章立て(分析の視角)が良いですね。派閥、総裁選挙とポスト配分(総裁権力の増大)、政策決定プロセス(事前審査制と官邸主導)、国政選挙、友好団体(減少する票と金)地方組織と個人後援会。
制度と運用の実態の双方から、そしてその関係について適確に分析しています。これだけの内容(特に運用の実態となぜそれが成り立っているか)を書くには、かなりの人に取材をされた結果だと思います。国会議員、党職員、新聞記者・・・。またそれを咀嚼し、全体の中で位置づける能力が必要です。

新書という大きさからの制約ですが、これだけの内容の本なら、もう少し大きな版でも良かったと思います。
その際には、今の国政(自民党一強)を成り立たせている要因=野党である民主党との関係、あるいは民主党との政権担当能力との比較を書いて欲しいです。
また、事前審査制なども良く書かれているのですが、官僚との関係や、国会対策委員なども深掘りして欲しいです。
今後の課題ですが、総裁と国会議員との関係、官邸と党との関係、官邸と霞が関との関係は、制度より運営(リーダーである総理総裁の意思とフォロワーである国会議員の意識)による面が多いので(第1次安倍政権と第2次安倍政権とでは選挙制度や内閣制度は変わっていません)、それらの分析も必要となってくるでしょう。
いずれにしても、自民党、そして現在の日本の政治を語る際に必須の教科書です。「砂原庸介先生の書評」も、お読みください。