12月19日の朝日新聞「イシグロ氏ノーベル賞、沸く日本・静かな英国」から。
カズオ・イシグロ氏のノーベル文学賞受賞。日本では連日報道され盛り上がりましたが、イシグロ氏の地元、イギリスでは様子が違うようです。
・・・英国では意外にも静かな反応だ。授賞式の翌日、主要紙デイリー・テレグラフ、ガーディアン、タイムズのうち、式典や晩餐会スピーチの様子を報じた新聞はなかった。文学賞の授賞が決まった時も1面で報じたのはガーディアンだけ。他紙は中の面で、日本のように読者、親類の反応まで報じる記事は見当たらなかった。
・・・ふつうは「英国人が受賞した」だけではニュースにならないようだ。今年は英国の研究者がノーベル化学賞に決まったが、翌日の新聞は全く伝えないところも。報じられても小さな扱いだった・・・
・・・日英の反応はなぜ違うのか。英国文化に詳しい北九州市立大の高山智樹准教授(文化研究)は「英国人は自国の文化に自信を持っており、海外の評価を気にしないからだ」とみる。本ならば、ノーベル文学賞より、英国最高峰のブッカー賞の方が話題になるそうだ。
日本にゆかりのある人などが賞を受けることに関心が集まるのは自然だ。一方で、日本のメディアや社会がノーベル賞だけでなく、「世界遺産」などでもにぎわうことについて、「科学・技術や理屈を重視する欧米主導の近代的な価値観に固執しているからだ」と経済学者の水野和夫・法政大教授は話す。「既に近代は終わろうとしているのに、欧米に追いつけ追い越せの価値観から抜け出せていない証しではないか」・・・