日経新聞6月9日の夕刊「森友・加計 裁量の霧の中 行政監視や記録保存あいまい」から。
・・・2つの問題でまず指摘されるのは「日本の行政は裁量が大きい」という点だ。比較行政法が専門の南山大の榊原秀訓教授は「日本は英国に比べ、国会や司法のチェックが弱いので結果として行政裁量が広い」と話す。日本と同じ議院内閣制の英国と比べよう。
英国で行政の不祥事や疑惑が発生するとどうするか。通常はまず政府自身が第三者機関をつくって調査する。法律で調査委員会の組織、手続きや報告書提出などが定められている。退職した裁判官や弁護士らを委員長に据え、数カ月かけて調査する慣例だ・・・
・・・議会の行政監視も力の入れ方が違う。英国では法案審議を主に手掛ける「一般委員会」と別に「省別特別委員会」がある。こちらは各省の特定の問題で関係者を招致して聞き取り調査し、報告書も刊行する。予算や法案の審議をする委員会の中で並行して行政の疑惑も追及する日本より、集中的に取り組める。
司法も行政チェックを後押しする。日本では国を相手取って提訴するのはほぼ利害関係者だ。原告は、許認可を取り消された業者や、行政の過失で健康被害を受けた住民ら。ところが英国では直接利害関係になくても、公益性が高い案件は国民が提訴できる。
英最高裁は1月に「欧州連合(EU)への離脱通知には議会承認が必要」と判決を出した。この時の原告の提訴理由は不利益の被害を受けたからではなく、あくまでも「公益性」だった・・・