グローバル化への反乱、シュトレークさん

11月22日の朝日新聞オピニオン欄、ヴォルフガング・シュトレーク(ドイツの社会学者)さんの「グローバル化への反乱。自由市場の拡大、成長阻む格差生み国家は形骸化」から。
・・・私たちが目にしてきた形のグローバル化が、終わりを迎えようとしているのかもしれません。自由貿易協定も、開かれすぎた国境も、過去のものとなるでしょう。
米大統領選はグローバル化の敗者による反乱でした。国を開くことが、特定のエリートだけでなく全体の利益になるというイデオロギーへの反乱です。そのような敗者たちはさげすまれ、政治からいずれ離れるというエリートたちの楽観は、一気にしぼみました・・・格差の広がりは、自由市場の拡大がもたらした当然の結果です。国際競争で生き残る、という旗印のもと、それぞれの国家は市場に従属するようになりました。政府が労働者や産業を守ることが難しくなったのです・・・

・・・低成長を放置すれば、分配をめぐる衝突に発展しかねません。それを回避し、人々を黙らせておくために、様々なマネーの魔法によって「時間かせぎ」をしてきた、というのが私の見方です。
分水嶺が70年代でした。まずはインフレで見かけの所得を増やしました。それが80年ごろに行き詰まると、政府債務を膨らませてしのいだ。財政再建が求められた90年代以降は、家計に借金を負わせました。その末路が2008年の金融危機です。今は中央銀行によるマネーの供給に頼りきりです。いずれも、先駆けたのは米国でした。「時間かせぎ」の間に、危機は深刻さを増しています。
大きな傾向は日米欧とも同じですが、停滞を真っ先に経験したのが日本でした。日本では長期雇用と年功賃金制が社会の安定の源でした。80年代以降、企業が競争力を失っても、政府の支えのもと銀行が融資を続けたのは、長期雇用に手をつけて「内戦」になるのを避けるためです。その結果が不良債権問題であり、長期停滞です。賃金は上がらず、非正規雇用へのシフトが進みました・・・
ごく一部を紹介しました。原文をお読みください。