(レストラン調理場での壮絶な修行、2)
斉須政雄著『調理場という戦場』の続きです。斉須さんは、3店目にして、三つ星レストランで働くことになります。パリの高級住宅街にあるヴィヴァロアです。その店のオーナーに、斉須さんは理想像を見いだします。その立ち居振る舞いにです。
・・オーナーがやってことと言えば、一日じゅう掃除をしている…ほとんど掃除しかしていない。彼の印象に残る姿と言えば「掃除をしている姿」です。
レストランで何よりも重要なのは「清潔度」だということや、お客さんに対する家庭的な態度…ぼくは大切なことの大半を彼から教わったような気がします。仕事場のありようや空気は、そっくりそのまま仕事に映し出されるとと知りました・・(p91)
お店にはワイン会社の営業の人などがよく来ますが、あまりに従業員然としているから、オーナーとわからないのです。洗い場のおじさんのように見えるオーナーに向かって、「オーナーはどこにいますか?」と訊ねます。オーナーは茶目っ気を出して、洗い場のおじさんを呼びに行ったりします。
お客さんが喜んで「今日の料理はすばらしかった」と言うと、オーナーはお客さんを厨房に連れて行きます。「すばらしいのは私じゃない。彼が作ったのですよ、この子」と従業員を誉めます。
職員が気持ちよく働くことができる職場を作るコツは、どこも同じですね。この項まだ続く