砂原庸介・大阪大学准教授が、『民主主義の条件』(2015年、東洋経済新報社)を出版されました。日曜日に紀伊國屋本店に行ったら、新刊書の棚の一番前に、平積みされていました。注目されている、売れているということでしょう。目次を見ると、次のようなくだけた表題が並んでいます。
第1章 ダメ、ゼッタイ―罪深き中選挙区制
第2章 あちらを立てればこちらが立たず― 多数制と比例制
第3章 混ぜるなキケン!?―混合制
(目次と序章の立ち読み)
堅苦しくなく、平易な文章で、読みやすい一般向けの本です。しかし、内容は重要なものです。民主政治が有効に機能しないのは、政治家個人の資質によるのか、制度によるのか。普通には、このような問題提起がされます。しかし、著者が問題にしているのは、選挙制度と政党の役割です。
政治に興味のある人、特に日本の政治に不満を持っている人、さらには政治家、マスメディアの皆さんにも、読んでもらいたいです。以下、著者による本書の紹介を転記します。
・選挙で代表を選んで人々のために働いてもらう民主主義というしくみに問題があるとしたら、それをあくまでも民主主義の中で、「より民主的」なし くみに 変えていくしかないことを強調しています。
・特に重点を置いているのは、「どうやって多数派の民意を政治に伝えるか」ということで、国民の多数派が考えていることにきちんと反応する代表が選ばれるためのしくみを考えています。「一国の政治は、国民を映し出す鏡に過ぎない」と言いますが、国民が悪いというだけでなく、選び方が悪い、ということがあるのではないか、ということです。
・そのために重要なのは「政党」をきちんと機能させることだという説明をしています。政治家個人ではできることが限られているので、政党という組織を作って国民を代表させることが必要だということです。政党の執行部がある程度集権的な決定をできるようにしないとそれが難しいということですが、同時に権力が集中する政党を(政党法などの)法律や規則でコントロールしないといけません。
・選挙制度を考えるときに、「一票の格差」だけが評価基準になるわけではなく、政治制度全体としてどのように政治家に意思決定をさせるかを考えるきっかけになれば、と思っています。