6月13日の日経新聞経済教室「成長戦略を問う―雇用」、佐々木勝・大阪大学教授の「攻めの労働移動政策を」から。
・・大学生に教える「労働経済学」の教科書では、生産要素である「労働」は一般的に可変と考える。すなわち、企業が生産量の需要や賃金に応じて自由に労働投入量を変えることができる。同時に、労働者も産業間を自由に移動できると仮定している。しかし、実際の労働市場は教科書通りにはいかない。新しい産業で急速に雇用が創出される一方で、古い産業で急速に雇用が喪失される。このように産業間で激しく労働需要が変動しているにもかかわらず、労働供給がそのスピードに付いていっていないように感じる・・
う~ん、これは教科書の方が、現実離れしているのであって、生身の各労働者は、そう簡単に転職できません。私を含めて、「明日から別の仕事に就きなさい」と言われても、例えば介護や農業の技能は持っていないし、引っ越しを伴うとなると、なおさら転職は難しいです。
この論考では、ドイツでは失業をできるだけ避けるため、経営難の企業で働く労働者の再就職支援事業に力を入れていることが紹介されています。多くの再就職支援会社が、州政府の指導の下、経営難の企業で働く労働者を受け入れて、上限1年間の職業訓練を与えて転職の準備を支援するのだそうです。結構うまくいっていると、報告されています。
・・(日本では)従来は、雇用調整助成金を柱とした雇用対策が主流であった。神林龍・一橋大学准教授の2012年の研究は、リーマン・ショックによって本来なら多くの雇用が失われるところであったが、雇用調整助成金のおかげで失業者が増加するのを防ぐことができたと報告している。雇用調整助成金は、衰退産業であっても労働者を放出しないようにして失業を回避する「守りの政策」として機能してきたが、もう次は「攻めの政策」が必要だ・・
雇用調整助成金は、失業手当ほどは知られていないようですが、ここで指摘されているように、かなりの人の失業を防いできました。特に2008年秋のリーマン・ショック後の急激な景気・雇用情勢の悪化に対応するため、支給要件が大幅に緩和されました。2009年夏には、月間約250万人が助成の対象となりました(3月13日付日経新聞)。