日本人の消費・モノから人のつながりへの変化

三浦展著『第四の消費―つながりを生み出す社会へ』(2012年、朝日新書)を読みました。大正元年(1212年)から現在までを、国民の消費という切り口から4つの時代に分けて、日本社会と国民の意識の変化を分析しています。
私は、日本の行政を考える際に、社会の変化が重要な要素であると考えています。家族、地域社会、消費、幸福感、勤労、ライフステージなど。当然のことながら、社会の課題によって行政の任務が変化するのです。『新地方自治入門』でも、そのような観点を取り入れ、三浦さんの著書も紹介しました。ウイキペディアの三浦さんの項でも、取り上げてもらっています。
私の問題意識や社会の見方に、三浦さんの考えと共通するところが多く、今回もいくつも納得しながら読みました。詳しくは本を読んでいただくとして、私が最も共感を覚えた点は次のことです。
すなわち、消費が、モノの消費から、人的サービスの消費に変化すること。そしてそれは金銭を払うことでサービスを受けるだけでなく、人間の関係を求める人が増えること。すなわち、豊かさがモノからつながりに変化すること(例えばp204)。これは拙著『新地方自治入門』の基本テーマでした。三浦さんの本は家族・個人の消費についてであり、私の本は地方自治体の課題についてです。
そしてそれは、消費が個人にとって、時間や人生の消費(消耗)ではなく、時間や人生の充実に変わることです。人生を浪費するのか、人生を満足するのかの違いです(p246)。地方行政にあっては、「住民が行政サービスを受ける客体から、参加する主体になることです。モノとサービスの20世紀から、関係と参加の21世紀へ」と、拙著(p346)では書きました。

そのほかに、なるほどと思うことが、たくさん書いてあります。例えば、16~24歳の若者が自動車運転で起こした死亡事故で、スピード違反が主因になったものが、1990年には1,600件あったのに、2009年には120件に減少しています。若者の車の使い方・かっこよさが、変化しています。
近過去や現代を扱った教科書・概説書が少ない中で、この本は重要な教科書だと思います。日本社会の変化にご関心ある方は、ぜひお読みください。