1月9日の日経新聞が、「貿易赤字転落、日本岐路に。31年ぶり、円高・燃料費増加で」を伝えていました。2011年に、日本が貿易赤字国になったという予想です。歴史的な円高で、輸出が伸びなかった一方、原発の停止で火力発電に使うLNGの輸入が膨らんだためと、解説しています。
問題は、この貿易赤字が、構造的に定着するとの見方があることです。これが一時的なら、そんなに問題ではありません。また、貿易赤字になっても、所得収支(海外からの配当や利子)などが黒字で、合計の経常収支が黒字なら、問題は少ないです。
「日本は資源が少ないので、石油や原材料を輸入してそれを加工し、工業製品を輸出して、栄えている」というのが、かつて教えられたことです。もっとも、経済に占める輸出入の割合は、諸外国に比べて日本はそれほど大きくないのですが。それでも、貿易で稼ぐというのが、一つの日本モデルであり、私たちが信じた神話でした。それが崩れるのは、いささかショックです。
成熟国になると、貿易ではなく、海外投資による所得収支で黒字になるのが、先進国の道筋です。しかし日本の場合は、この「成熟」が早くやってきているので、海外投資の蓄積が大きくありません。
安価で良質な工業製品では、後発国に追いつかれました。今後、何を「売って」日本は稼ぐのか。何で世界に貢献し、諸外国から尊敬されるのか。その岐路に立っています。