記者さんと話していて、時々???と、思うことがあります。何人もの方が、「強力な復興庁ができたら、事業が早く進みますよね」と、おっしゃいます。ちょっと違うんです。
その場合に、どのような事業を、考えておられますか。道路や学校、住宅でしょうか。すると、市町村道は市町村の仕事、県道と国道のほとんどは県の仕事です。国の直轄国道は、そんなに多くありません。幼稚園や保育園と小中学校は市町村の事業、県立高校は県の仕事です。国が建設する学校は、大学くらいです。住宅の多くは個人のもので、商店は個人か会社のものでしょう。市営住宅なら市です。鉄道ならJRでしょう。病院は個人立か市や県立です。
そうなんです、国が直接工事をする事業は、ほとんどありません。復興庁が強力な権限を持っても、する事業はそんなに多くありません。厚生労働省が個人病院を復旧するとか、経済産業省がコンビニを作るのは、想定しにくいです。
このホームページでも何度か書いているように、地域の復興の主体は、住民と会社と市町村役場です。国の役割は、国が市町村の道路や学校を建設することでなく、市町村や個人と会社が復興事業をしやすくすることです。復興庁は、そのために強力な権限や手法、そして組織を持たなくてはなりません。
国から目線でなく、市町村目線で考えてみてください。市町村は、何をしてほしいか、どうすれば街の復興がうまく進むか。町に足らないこと、それはお金、専門知識と専門家です。街の復興を妨げるもの、それは複数にわたる申請、複雑な規制でしょう。
すると、国=復興庁はそれを変える権限と組織を、持てばよいのです。街の復興計画策定の助言をすること、お金を支援すること(補助金や交付金)、規制や手続をやりやすくすること(特区制度)、それぞれの事業の進度を調整することです。
そして、道路や建物を建設しただけでは、街の復興になりません。学校や病院、商店が再開されて、初めて街が機能します。さらに、働く場がなければ、住民は暮らしていけません。それらは、復興庁が権限を持っても、実現することではありません。また、まちづくりの計画策定の際に、住民の同意を取り付けること。これは、強力な復興庁ができても、すぐにできることではありません。