28日の朝日新聞オピニオン欄「私の視点」、萬田正治鹿児島大学名誉教授の、今回の宮崎県の口蹄疫についての発言から。
・・根本的な問題は、旧態依然たる国際獣疫事務局(OIE)の指針とそれに従う日本の対応策、そして近代化畜産にあるのではないか。
OIEは、世界を口蹄疫発生がない「清浄国」と、ある「非清浄国」に分類する・・しかし、グローバル化で人と物の往来が地球規模で頻繁に行われる今日では、人や物に付着する病原体を陸海空の国境ラインで未然に防ぐことはほぼ不可能だ・・
そもそも細菌やウイルスなどの病原体に対して、人間を含む動物はその抗体を獲得し、抵抗力を身につけて対処してきた。これに対して病原体は耐性を獲得したり、新型の病原体となったりして反撃する。再び動物はその抗体をつくる。この繰り返しが生物の進化だ。従って、無菌化社会を進めていけば、かえって動物が持つ免疫力を衰弱させ、動物たちを危機に陥らせることになる。清浄国の家畜たちは、口蹄疫ウイルスに日頃遭遇しないために口蹄疫に抵抗力をもたないひ弱な家畜となり、ウイルスの侵入で発病し、大騒動となる。
今回、全頭殺処分ではなく発病しなかった家畜を残せば抵抗力のあるものを選抜する結果となり、低コストの有効な対策となっただろう。マスコミ報道は国民に恐怖感を与えたが、この病気は一般に人間には感染せず、動物の致死率も低い。健康な家畜を育て抵抗力をつければ、怖い伝染病ではない・・
そのような考え方も、あるのですね。