鈴木伸元著『新聞消滅大国アメリカ』(2010年、幻冬舎新書)を読みました。先日の、インターネットがジャーナリズムを壊しているという、問題関心からです。本の内容は主に、アメリカの新聞社が次々と消えていっているという報告です。読むと、実態はすさまじいものです。日本とは、広告収入と購読料の割合などが違いますから、そのまま日本には当てはまらないとしても、大変な事態です。
私は、新聞はすべてが正しいとは決して思いませんが、その欠点の分を差し引いても、新聞は民主主義国家において不可欠の公共財だと思います。先日の記事でも書きましたが、インターネットの検索サイトが無料で(広告収入で)もうけ、記事を提供している新聞社が赤字になるという構図は、長続きしません。検索サイトがこれからも儲けようとするなら、「寄生している宿主」である新聞社を、生きながらえさせる必要があります。宿主を殺す寄生虫は、実は弱い寄生虫です。
これは、ビジネスの方法=いわゆるビジネスモデル(これは日本語だそうです)を、考えさせる事態です。情報産業にあってはコンテンツをつくる企業とそれを売る企業、商品にあってはモノをつくる企業と売る企業の、どちらが儲けるかです。インターネット業界では、それぞれの業態をレイヤーと呼ぶそうです。百貨店が場所貸し業になって、自ら商品を売らず、ブランド店が場所を借りて自らの商品を売る仕組みになりました。これで場所貸し業の百貨店は、衰退しました。街の本屋さんは、委託販売で、あずかった本を並べ、売れた分だけ儲けます。この場合は、衰退しながらも生きながらえています。もっとも、専門書は大規模店舗やインターネット販売に負けて、雑誌販売で生き残っているという見方もあります。
また新聞には、ニュースの優先順位をつけてくれる機能があります。たくさんのニュースから、切り取ってくれる今日のニュース一覧は、大きな機能です。どのニュースでも見ることができるは、どれを見たらよいかわからないということです。このような機能は、評価されないのでしょうか。114