「本日ここには、コンテンツ業界の皆さんが大勢おいでのことでしょう。皆さんこそは、現代日本の文化を世界に広めていく、新時代の担い手だと思っております。例えば中国の街で、若い人が行くオタッキーな店を覗いてみるとよくわかります。日本のアニメグッズ、ありとあらゆるフィギュアが、所狭しと並んでおります。Jポップ、Jアニメ、Jファッション。これらの競争力は、ミッキーとドナルドには悪いですが、実際聞きしに勝るものがあります。
皆さんが好きでやってきたこと、外務省はおろか、誰に頼まれたのでもなく打ち込んでこられたこと。それが着実に、日本のファンを増やしております。若い人たちのハートを、中国始め、いろんな国でつかんでいます」
「漫画の話をし始めますと、私の場合きりがなくなるのでここらでやめておきますが、外交というものは外交官同士、秘密の交渉をし、おしゃれな会話をして進めることだという古い固定観念は、この際きれいさっぱり捨ててください。
『日本』とか、『ジャパン』と聞いて、ぱっと浮かぶイメージ。それが明るい、暖かい、あるいはカッコいいとかクールなものですと、長い目で見たとき、日本の意見はそれだけ通りやすくなります。つまり、日本の外交がじわりじわり、うまく行くようになるわけです」
「日本のブランド力は決して弱くありません。それどころか、最近米国のある大学とイギリスのBBCが、世界のいったいどの国が『良い影響力を持っているか』についてアンケートを取ったところ、調査対象33カ国中、31カ国までが、日本を挙げたという事実があります。これだけ圧倒的多数の国に支持された国というのは、この調査による限り他にありません。日本はダントツの1位です。
国を、一種の企業のようなものと見て、そのものずばり、ブランド力を計る調査というものもありまして、英国の専門家がやっております。それでも日本はドイツの次、フランスの上で、第7位です。アジアからは唯一、10位以内に入る国です。こういう土台のうえに、古いものから新しいものまで、日本文化をいろいろとアピールしていかねばならないと、思っております」
「日本文化を外国に広めていく王道は、なんといっても日本語の学習者を増やすことです。皆さん世界中で日本語を勉強しようとする人の数は、増えていると思われますか、減っていると思われるでしょうか。
日本経済は長いこと低迷したので、それに連れて日本語に興味を持つ人も減っただろうと思いきや、実は増えております。外務省関連の独立行政法人、国際交流基金の調べによると、1990年に98万人だった世界の日本語学習人口は、2003年に235万人と、倍以上になっております。
なぜかと思ったら、テレビから流れてくるアニメの主題歌が、日本語なのです。それで自然に、日本語に関心をもつ子供たちが増えてきた…。日本のポップカルチャーが、今までとはまったく違う関心を日本語に対して生んでいるからなのです」
これは、デジタル・ハリウッド(略称デジハリ)という、デジタルコンテンツの学校で行われた演説です。デジハリは、私も一度見学に行ったことがあります。皆さんなじみがないでしょうが、間違いなくお世話になっています。CGグラフィックで作られたテレビコマーシャルの多くが、この学校関係者の作品だそうです。
大臣演説の画面に添えられている「プレゼン用データPPT」は、楽しめますよ。PDFの方は動きませんが、PPTはクリックするかページダウンを押すと画面が動きます。これも、デジハリの学生さんの作品のようです(スライドをとばし先に行くとき、終わるときは右クリックしてください)。